愛人管理全百科 69
衝撃のあまり、頭の中が真っ白になっている間にも、悠実は言葉を続けた。「少しでも作品に役立つよう、私も取材進めたのよ。いろいろコネやらこれやら使ったわよ。もちろん自分のサラリーからね」 そう言って、悠実は親指と人差し指で輪を作る仕草が、ひどく下品に見える。急に悠実がベージュチークを塗った頬をこわばらせた。「玲ちゃん、どうしてそんなに嫌そうな表情するの?」「嫌そうって……」 君がそこまで低俗な人間だと思わなかったし、勇作の悪口を聞かされていい気分でいられるものか。直接そう言う勇気もなかったが、悠実は勘づいたようだった。心底悲しそうにつぶやく。「私、玲ちゃんのためにがんばってるのに……玲ちゃんのために、何でもしたいと思ってるのに分かってくれないの?」 それまでの冷徹さが嘘のようだった。一気に大学時代の彼女に戻ったみたいだ。おせっかいで、さばさばしていて、男の子みたいだった彼女に。 しかし、すぐに玲は思い直した。(どうせ作品のためだろ。自分が編集者として名を上げたいだけなんだ。こんな手を使ったって俺はもう、落ちない) それより先に勇作たちのことを聞きたいと、話題を戻す。「それで、先生たちに何があったんだ?」「やっぱり知りたい?」 得意げなようでいて、どこか翳りもある面持ちで悠実は語り始めた。頭の中のできごとをまとめるように何度か首を振ってから、先ほど来たばかりのコーヒーを一口飲む。 。 つづくポチっと押していただけると嬉しいです!↓ ↓ ↓