ウルビーノの街は標高480m、人口1万5千人。
世界ユネスコ遺産に指定されているマルケ州の街。
ルネッサンス時代はイタリア一優雅な宮廷があったウルビーノ公国の都になる。
今回このラファエッロ サンツイオの生地になるウルビーノに行って来たので
ここでこの素敵な街を少し紹介しようと思う。
ドウカーレ宮殿を奥に見る
現在の旧市街を作ったのは、あのウフッツイ美術館に保存されている横顔が印象的なフェデリコ2世モンテフェルトロ伯。時代は1400年代半ば。彼は傭兵だったために、片目を失い、そのために肖像はいつも横顔(目のある側)で、鼻は視界を妨げないように目に近い部分をそぎおとしたと言われている。
ピエロ デッラ フランチェスカに依る伯の肖像
(奥さんのバッテイスタ スフォルツァの肖像と対になっていて、裏には勝利の行進と彼が治めた地方の風景画になっている。現在はウフイッツイ美術館蔵だが、もともとはこの宮殿の玉座の間の隣、謁見の間に飾られていた)
フェデリコ2世は、政治家であり、武将であり、芸術をこよなく愛し、アーチストたちを育てた。様々なことに関心があり、当時イタリアでも最も素晴らしい図書館のひとつを持っていたと言われる。武将であった戦争屋が、文化や芸術に非常に関心があったというのは、興味深い。
ドウカーレ宮殿の一番古い部分は、シンプルながらも、非常にルネッサンス的であり、また窓枠の飾りや、暖炉の彫刻を含めてとても美しい。ウルビーノ公国がのちに法王の領土に入ってしまったことから、この宮殿内にあった美術品の多くが様々な場所に移動してしまい、現在は昔のようには残っていないのだが、十分に当時の宮殿の美しさが想像できる。(イタリア一優雅な宮廷であった。)
名誉の中庭 ドウカーレ宮殿は街一番の見どころ
私が持っている美術書の中でも挙げられていて、特に注目するに値するのがフェデリコ2世の書斎。
小さいながらも壁の下半分が木の嵌めこみ細工で覆われ、フェデリコ2世の横顔の全身像もあるし、遠近法をうまく使ってのだまし絵のようなはめ込みが素晴らしい。
このはめ込み細工は、おそらくフェデリコ2世がトスカーナから連れて来たアーチストたちが作ったと思われるのだが、下絵は、フランドル地方から彼がわざわざ呼んだアーチストたちを含めてボッテイチェッリなどのやはり一流の画家たちが描いているもので、はめ込み細工は書斎だけではなく、多くの木の扉にも見ることができる。
騙し絵みたいな書斎の嵌め込み細工
丘陵に作られている街なので、宮殿内でもこの上下を利用して空中庭園が造られている。
それは、モンテフェルトロ伯、のちにフェデリコ2世の息子グイドバルドに子供ができなかったために
デッラ ロヴェレ家からフランチェスコマリアが養子になって後を継ぐのだが、彼らが大事に作らせた
秘密の園を復元しているもの。
当時ルネッサンス時代に流行った、ヒュプネロトマキア ポリフィリ(ポリフィルスの狂恋夢)という本から主人公ポリフィロが恋人ポリアを探しながら夢のような冒険をする場所がヒントになっている。
空想的でありながら、古代建築や錬金術、植物学という当時の広い教養が背景になっていて、バロック時代に至るまで広く参考にされた本。
宮殿内部から空中庭園を覗く(昔はもっと綺麗だった)
宮殿内で現在特に注目したいのは、フェデリコ2世がやはり呼んで、宮殿や街の建築について意見を聞いたといわれる、ピエロ デッラ フランチェスカの絵。
2枚の板絵が保存されているが、特に有名なのが、キリストの鞭打ちという絵で、美術史界でも謎の多い絵になる。
遠近法を特に重視したルネッサンスで、彼が遠近法をうまく使ってどのようにうまく建物を表現できるか、ということを試みたものだとも言われている。
ピエロ デッラ フランチェスカのキリストの鞭打ち
遠近法についてはこの建物の中にも例えば名誉の中庭に非常に綺麗に使われているし、そのほか、やはり建築に関わった、ダルマチア出身のルチアノ ラウラーナが描いたと言われる理想の街という絵や、扉の嵌め込み細工にも使われているので、十分に楽しめる。
地上階には、考古学博物館と、伯の図書館跡、お話した夢の庭園に関する展覧会と、空中庭園に出ることができる。またその手前に、許しの礼拝堂があるので、それもお見逃しなく。
(戦争で沢山人を殺した伯が許しを願った場所)
元気があったら地下にも是非足を伸ばしたい。フェデリコ2世が使ったお風呂場を始めとして、食べ物倉庫、お台所、馬屋、雪を保存した場所(食べ物を保存するために)などがあるので、ここも見逃せない。馬屋は非常に大きく、300頭の馬が飼われていたと言われるが、それも当時の先端を行くものであったと言われている。
馬屋この奥にもまだある
1400年代半ばにシエナ出身のフランチェスコ デイ ジョルジョ マルテイーニを呼んで、宮殿が完成され、ウルビーノ公国とその領土の防御のための要塞を作らせたのだが、それが現在もかなり残っていて、素晴らしい。ジョルジョ マルテイーニは、ドウカーレ宮殿の改築にも関わっている。ドウカーレ宮殿と下のメルカターレ広場を結ぶためのランパ(螺旋階段)は、現在も歩くことができる。
メルカターレ広場からランパと宮殿、街を取り囲む城壁を見る
Palazzo Ducale ドウカーレ宮殿
マルケ州国立博物館 Galleria Nazionale delle Marche
piazza Rinascimento 13
61049 Urbino
tel 0722 2760
月曜日 8時半から14時まで
火曜日から日曜日 8時半から18時15分
休館12月25日と1月1日
チケット8ユーロ