いつか何処かで…。17
倉敷は晴れたり曇ったり、夜になって少し冷え込んでいる。梅雨の日の一日である。
近所では田植えが行われている。川には水量が増え田地に入れている。もうじき稲を植えた田地が緑に代わることだろう。長閑な田園風景がみらることだろう。
それにしてもこの時期にこんなに寒い夜が続くことに少し戸惑っている。私のような夜型の人間にとってはつらいことだ。
世間のことにあまり触れたくない。その思いはある。あくまで専門家でもないので知ったかぶりはしないことにしている。
世界の、日本の動きに対して適切な提言を持っていないからだ。私はこう思うという範疇でしか語れない。
はっきりと言えることは、
国民のレベルで政治も社会もレベルは決まるというしかない。と言うことは世界のレベルが低下しているということだ。いくら大学がたくさんできても人間としての資質は向上していないということになる。
哲学はなくなり、文学も低迷している。人間の精神を高めるものがこの体たらくであるから仕方がない。また、国民はそれレベルを上げる努力をしていない。相も変わらず仕事ができない議員に投票をしている。その人に自分を信託していいのかの判断はない。マスコミの先導や周囲打算に迎合しての思惑の中でそれを決めているということは人間を洞察するこころの目を持ってはいないということだ。
国民のレベルを上げない限り相変わらずの議会になる。それをとやかく言うことは自らを貶めることに気づいていない。
例えば、今盛んに言われている天皇陛下の譲位の問題にしても、平安時代には譲位は当たり前に行われていた。天皇が譲位すると上皇になられ、また、その上の法皇になられ院政が行われていた。いまさら皇室の在り方に政治が言うべきことなのかと疑問に思う。
また、女性天皇、女系天皇という問題が浮上しているが、この違いが判る人はそんなに多くない。これは昔にはよくあったことで女性の天皇も何人か出ている。これらは政権争いに関係していた。この女性と女系の問題を書かないがどうか調べて認識を新たにしてほしい。そこには遺伝子の問題がかかわっていることを知るだろう。
天皇についてあまり書くと快く思わない人も多いのでやめておく。
私は西行法師を書くために平安時代の末期に遊んだことがある。そのことは戯曲「花時雨西行」として書いた。ここに大きく色を落とすのは鳥羽天皇の女院の待賢門院だ。崇徳帝の母親である。また建礼門院の母でもある。平清盛にも深いつながりがある。平安の時代を遊んでも末期が創作意欲をくすぐることがなんと多かったか。この時代から鎌倉にかけて7大仏教が誕生している。天台の僧兵が盛んに活躍をしたのはこの時期である。それぞれの仏教の宗派を調べると大変面白かった。
親鸞が男の性に苦しんでいた時に、
「越後の冬はまるで墨絵のような世界であった。その極寒の地直江津に私は流されたのであります。時は鎌倉、この私は愚禿親鸞と申す乞食坊主である。比叡山で二十数年の修業を捨て山を下り、彷徨い歩いた末に比叡山よりもっと激しく辛い百日間の六角堂での荒行に挑みました。煩悩、女人が齎らす苦しみを乗り越えたかったのであります。天台真言臨斎曹洞の教えは殺生をしてはならん、つまり肉を食ってはいかんということと、女人と媾合うてはならん、と言うものであったのだが・・・荒行も終わりに近ずいたある日、聖徳太子の化身といわれます、救世観音が現われ、「もしお前が女人なしでは生きて行けぬと言うのであるならば、この私が玉のように美しく清らかな女身になりお前に身を任せよう」との言葉をむつがれ、肉食妻帯をお許しくだされ、「これから法然の許へ身を寄せよ」との道を指し示してくださったのです。私はその足で直ぐ様法然上人を尋ねました。その教えに心洗われ涙を流し、弟子の末席に加わることを許されました。「南無阿弥陀仏」と唱えれば、極楽浄土へ往ける、ただただ念仏を唱えれば、何も小難しい経も読まなくていい、そのことが民衆に受け入れられて、広がりつつあったときでありました。伸びよう、大きくなろう、民衆の受けがいいということは、比叡山延暦寺としては快い事ではありますまい。僧兵の武力による嫌がらせ、非難中傷が巷を駆け廻りました弟子の何人かが、朝廷に出入りしていた女人に手を出し、檄に触れ、女犯の罪で、法然上人以下すべて流罪を言い渡されたのでありました。直江津で恋をいたしました。地領を持つ身分の高い家の子女、その子女が後の恵信尼であります。流罪の身でありながら所帯を持ち、なした子が八人。流罪が解かれても京都には帰らず、恵信尼と信州は笠間で、浄土真宗を布教いたしました。法然上人の教え、ただただ「南無阿弥陀仏」と唱え参らせば、どんな極悪人でも極楽浄土へ行ける。その教えは広く広まっていきました。子供は一世夫婦は二世その絆を説きました・・・
「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人おや 」
平安時代はとても面白かった…。