いつか何処かで…。48
倉敷は今日。晴天が続き暑い日になるという。32度と予報…。
それにしても昨今の日本国は異常事態である。この混乱はテレビと新聞が理性を失ったことで始まっている。また、それらは金というものしか見えていない。それをさえている資金源潰すしかない。
今日もそんな中小町を載せようとしている。浮世の憂さ晴らしというところか…。
十三歳の清子様には・・・。
「あなたは殿方を知っているのですか」
殿方の文が届くようになるとそのように私にとったのでございます。
「はい」私は小さく言葉を膝に落としましてございます。
「そうですか・・・。私は殿方が嫌いなのです」
利発で明るい清子さまの裏の面を見たようでございました。
「更衣として上がられると・・・」
私は呼び水をさしました。
「怖いのです・・・このごろどうして女に生まれたかを嘆くのです、考えるのです」
今まで見たこのないくぐもった顔と理性を捨てた声でございました。清子さまの本音を見たのでございます。
「それでどのような・・・」
恥ずかしそうに言われて、
「いいえ、もう・・・」
うなじが赤く色をつけておられました。
「男は獣でございます。心と体をばらばらにして弄ぶのですから・・・」
私は初めてのときのことを思い出しておりました。
いかつい獣が襲い掛かり体を引き裂いたときのことを・・・。
「なんという・・・おぞましいこと」
「ですが、その獣が・・・」
「私が・・・この肌が・・・あなたのように白くないと・・・湖に向かって立ち尽くすあなたの白い体を見たとき・・・」
「いいえ、肌の色ではございません、これから・・・。男を知れば瑞々しい肌に・・・」
あの夜の事を見られていた。そう思うとなんだか意地悪心が頭を擡げてきたので御座います。
「そんなものなのですか・・・」
思案げに言葉を落として、
「女とは悲しいものなのですね」
といわれたので御座います。
そんな日が御座いまして・・・
館様が訪れになられたときに、さわりを語りまして御座います。
「それは困ったな、男嫌いでは・・・」
館様は私の肌を愛おしく撫でながら、
「地黒が仇になっているのか・・・」
「いいえ、あのお年ですとそのようにお考えになられます。自然なので御座います。ですが・・・」
「男を知ったら狂うか、お前のように・・・」
「はい。押しつぶされたい、壊して欲しいと考えるものなので御座います。女の体とはそのようなもので御座います」
「ならば、清子の教育はお前に任そうかのう」
「そうしますと、もっとしばしばのお運びがなくては・・・」
「そうじゃのう」
館様は頬を緩めて・・・。
琵琶湖からの風は心地よい流れで御座いました。
3
わびぬれば身をうき草の根をたえて さそう水あらばいなんとぞ思ふ 小野小町
はい、清子様も更衣として上がられたのでございます。におうばかりのお美しさと申せば良いのでございましょうか・・・。咲く前に咲く密かな一輪の花が表舞台へと歩を進められたのでございます。
十四歳とは思えぬほどの立ち振る舞いで、堂々としておいででございました。更衣の吉子様、清子様、館様の出世はもう誰がなんとも言えない所まで上がろうとしていたのでございます。
私は館様の「待っていてくれ」の言葉を恋しがるそんな女に代わっていたのでございます。
咲く前に毟り取られた花は蜜を滴らせて待つ、そんな花の命にようやく芽生えていたのでございます。
館様は足しげくお運びになられました。官位が上がれば蝶の羽ばたきはより旺盛になるのでございましょうか、狂ったように蜜を欲しがりましてございます。
ここまで書いて、言葉として書いていない。なぜここで、と考えても、在原業平、深草の少将、紀貫之、ここで立ち止まった…。私の構想のミス、弥生式部を吉子に伴をさせた、これでは清子が書けなくなったということもある…。が、ひとまずここで、今回で閉じたい…。
認識として日本は狂ったテレビと新聞による国民への宣戦布告である…。
これは何の序章であろうか・・・国民は自己防衛しかない…。