小樽の町。
小樽の丸井デパートの閉鎖が決まった。 物心ついた時からセントラルタウンにあったデパート。 平成元年当時の背丈の小さかった自分には巨大で華やかなデパートとして映り、小樽と言う町自体が華やいでいるイメージがあった。 その記憶の中では俺は母親に手を引かれて気持ちの良い青空の中、ヤマハ音楽教室にピアノの習い事に向かっていた。 デパートの前ではどこかのスポンサーがキャンペーンの風船を配っていた。 普通の街のように人が行き来していた。 そして実家の商売もそれなりにうまくいっていた。 あれから10数年で、全てが変わった。 家の商売も倒産し、高校時代俺がアルバイトしていた同じ商店街にあるセブンイレブンも閉店。 ついには小樽市最後のデパート丸井までもが。 全てが変わった。 映画館もボーリング場もない町。 あの華やいだ港町の姿はもうない。 商店街は活気に溢れ、商店街の店主同士の振興も盛んで、夏は海、冬はスキー旅行に行っていたのに、今はなんの振興もなく、知った顔も店をたたみ、どこかへ行ってしまった。 母親は俺に未来だけを見て自分のためだけに生きろと言う。 お前には未来があるが、私は小樽と共に死を待つだけだと。 そんな事絶対させない。 全てひっくり返してやる。