太っちょポッポのトットさん ~ じゃあ地球に帰ろうか・・・あれ? ~
「なんだか可哀そうな気がするね、解剖されちゃってさあ。」ジョンピーはつぶやいた。 ビリノン星でグーが言った作戦とは・・・・・生物を細胞レベルまで丸々コピーして脳細胞に行動をプログラムして本物と同じような動きをするおもちゃを作るのが最近ビリノン星で流行っていた。コピーとは言っても有機組織を組み合わせるだけで、組み合わされたコピーには感情や意志はなく単なる人造肉にすぎないのだ。それに行動プログラムを埋め込むとあたかも本物の生物の様に動くのだった。 「お前、俺の方が解剖されればよかったのにって思ってんじゃないだろうなあ?」トットさんはジョンピーを睨んで憎々し気に言った。「でもトットさん。地球で起きた未知の生物騒動も単なるデブのハトだったという事が分かって、これで晴れて大手を振って街を歩けるんだよ。」ジョンピーの励ましとも侮辱とも取れる言葉にトットさんは顎をわなわな震わせた。おまけにお腹のお肉もわなわなと波打った。 そんな二人にタラが割り込んだ。「君の複製を作ったときについでに調べたんだけど、DNAは確かに地球のハトだったよ。だから君は単なるデブのハト!」またもやおちょくられたトットさんだが、怒るのも忘れて安堵の表情を浮かべた。 折角地球から170万光年離れたビリノン星に来たので、トットさんとジョンピーは星を見て回ることにした。宇宙標準発展レベル8のビリノン星は見るもの、聞くものすべて驚異に満ちており、人々のちょっとした生活が地球ならSF映画でしか見ることのできない光景だった。 星の各地にある名所や施設に行くには、エントランスゾーンという場所に行けば、そこにある入り口を通って星の反対側にも一歩踏み出すだけで行くことが出来る。飛行機なんていらないのだ。まあ人工的なワームホールみたいなものだが、今回の地球とビリノン星を結ぶ天然のワームホールには、高度な科学知識を持つ宇宙国家にとっても驚くべきことであり、早速、関係機関の調査が始ったほどだ。 それはさておき、ビリノン星の驚異の世界を一通り見終わったトットさんたちはそろそろ地球に戻るために、ワームホールのあるオキ・ラ・クー島に戻って来た。 グーさん、タラさん色々案内してもらってありがとう。地球に戻ったら自動翻訳機がないから人間に教えることはできないけれど、遠い将来地球も宇宙国家に加盟できるほど発展すればいいなあと思います。ジョンピーの言葉が翻訳機を通してグーとタラに届いた。「君たちの地球のレベルはまだ2だけど、一旦壁を超えると結構早いもんだよ。レベル7に達したら宇宙国家に間違いなく入れるさ。ただし、発展レベル7以上であることの他に平和であることが絶対条件だけどね。」タラが手を差し出すとジョンピーは翼を差し出し握手をした。「トットさん、地球に戻っても単なるデブのハトで通るからもう安心だよ。」グーの言葉にトットさんはむくれて言い返した。「デブのハト、デブのハトってうるせえなあ。」 トットさんはまだ何かブツブツ言いながら、デブリンバトが転げまわっている原っぱの中に押し進んで行った。「こら!どけ!どけ!」トットさんがデブリンバトを蹴飛ばすと、それが面白い、自分も蹴飛ばして欲しいと後から後から押し寄せて埒が明かなかったが、どうにか最後のデブリンバトを蹴飛ばして、さあワームホールの入り口だと思った途端。 「じゃあ地球に帰ろうか・・・あれ?」 みんなは一斉に叫んだ。 「あれ?あれ?あれ~?ワームホールの入り口がな~い!!」