cafe de zazie

母は１日休暇をとった。
なんだか疲れがたまってしまった。
義母と義姉に、朝から夕方まで娘を託した。

イヤイヤ期も始まり、水疱瘡で二週間ひきこもった後、
夫が残業＆休日出勤＆観送迎会＆出張などなどで
２週間ほど寝に帰るだけの生活になってしまった。

娘と二人だけの生活は、規則正しく慎ましく温かく幸福であるが、
やはり大人の生活も少しはないと、母は寂しくなるのだよ。

何をしようか、さんざん迷ってしまったのだが、
なんとなくすごく疲れていたので、
何かプラスのことをする気力がなかった。
シュタイナーの講座、美術館、映画、演奏会、
行きたいけど、とても行ける気分じゃなかった。

じゃあ、マイナスをうめることにしよう、と
ヨーガ、水泳、整体…と思ったけど
今度は予約をするのも面倒で当日になってしまった。

友達に会って食事しておしゃべりしたかったけど、
約束をしたり待ち合わせをするのも面倒だった。

これはかなり重症の疲労のようだ。
家に帰ってのんびりしよう…でも、それも悔しい…。
ウオルドルフ人形の布団をつくろうか？
アルバムの整理をしようか？
久しぶりにカンバスに絵を描こうか？

母のリフレッシュ休暇の過ごし方はいろいろだと思う。
誰はばかることなく、人それぞれ好きなことをすべきだ。
が、私はどうしても、好きなことができない。
こういう時くらい、育児のことは忘れて好きなことすれば？
と思うのだけれど、なかなかその気になれない。

しかも遠くに行く気になれない。
地震でもあって帰宅困難者になって娘に会えなくなったら…
などと真剣に思ってしまうのだ。

ついこの間まで、子供なしで自由に多趣味に
ながーーーい青春を謳歌してきたので、基本的にわがままだ。
その頃の楽しみを再開すると、
娘との生活を『不自由』と不満に思いそうで恐いのだ。

事実、不自由だし、不満はないとは言えないけれど、
だからといって、どっちがいいかと言えば、
比較する必要もないほど、娘との生活は尊く幸福に満ちている。

そして、それは期間限定。あと二年しかないのだ。
その後も娘とはどんどん離れて行くのみなのだ。
子育てとはゆっくりと子を手離して行くことなんだよねぇ…。

不満を感じるなんて、もったいなくて断じて嫌なのだ。
特にあと２年は、他のことに気をとられてるヒマはない。
この蜜月を十二分に楽しみたい。
むしろ、そのためのリフレッシュ休暇なのよね。

……などと、興奮気味に考えながら、義母の家から駅に向かう。

いつもそうなのだが、この道ですでにリフレッシュされる。
ひとりで自分のペースでまっすぐに道を歩く。
危険から我が子を守る必要もないので緊張感がない。
前から自転車が来てもスッと避けられる。
荷物が軽いので気分も軽い……。
これでもう、気がすんでしまうのだ。
本当に一番したいことは、美術館でもヨーガでもなく、
まっすぐ道を歩きたかっただけなのかな？…と思う。

それから、地下鉄ではなく光の入る電車に乗りたいと思い、
ぼんやりとJR環状線に乗り梅田に出た。
電車の中吊りや、乗客を見ると、いつも驚くことばかりで
自分はなんと世間ズレしていることかと思わされる。

『キャトルセゾン』『Madu』『アンジェ』で
娘用のちいさな食器を探した。
その後、堀江に帰って『チャルカ』でランチを食べた。
公園の帰りに近くのカフェでランチすることがあるのだが、
子供たちを連れて来ても大丈夫そうかチェックしに来たのだ。
やはり普段の生活と離れようとしない自分がいる。

家に戻るとタケノコが大量に届いており、
アク抜きしなくちゃいけないので、
出かけることも、居眠りすることもできず、
タケノコ湯がきながら本を読んで午後を過ごした。

結局、雑貨屋めぐりとタケノコで休暇は終わった。
雑貨屋ではなにも買わなかった。
いいのはあったけどレジに並ぶのが面倒だった。
これでいいのか？まあ…いいさ。…な１日だった。

娘をむかえに行く時はいつも心が弾む。
早く会いたい!! ママ!!って大喜びで笑う顔が見たい!!
リフレッシュ休暇の醍醐味はここにあるのだ。
ものすごい勢いで自転車をこぐ。
「どけろどけろ」な感じでこぐ。
「子供を待たしてる母は恐いのよ!!」って顔でこぐのだ。