音壁の世界(1)
【 ポップ偏差値 74 】
大滝詠一 / 幸せな結末 '97 作曲大瀧詠一 編曲井上鑑
1981年の『A LONG VACATION』、1984年の『EACH TIME』の両作以降オリジナルアルバムの発売の無くなった大滝詠一の晩年のシングルCD曲。「君は天然色」はウォール・オブ・サウンドを代表する金字塔だけど、その質・完成度の高さからか晩年は寡作なアーチストとなってしまい、そしてまだまだ良作を残せる現役状態のまま65歳にして亡くなってしまったのがとても惜しまれます。個人的にはより多くの音壁名曲を残して欲しかった。
その大滝詠一の晩年となる97年の本曲はTVドラマの主題歌であったこともあり、かなりのヒット曲となりました。ウォール・オブ・サウンド色の濃い作品として日本では一番売れた曲かも知れませんね。曲はしっとりとした大人向けバラードで、少し哀し気なメロディはAメロからサビに至るまで流石の出来で作曲家としての大滝氏の力量を今更ながら思い知らされます。ですが本曲の真髄は、それらメロディを盛り上げるウォール・オブ・サウンド的アレンジにこそあります。これは当ブログでは、やはり音壁アイドルポップの金字塔、
村田恵里 / オペラグラスの中でだけでも取り上げた井上鑑氏のアレンジ力が大きい。
時折入るカスタネットの効果的で軽快な響き、きれいに澄みきったエコー感のあるピアノの軽やかな音色、品が有り荘厳な雰囲気を醸すストリングス、大滝詠一節炸裂な迫力あるドラムなど。そして最大の聴き所は美しいメロディとそれら器楽が複合的に重なりあった間奏で、更に追い打ちをかけるように重なり響き渡る快活なカスタネットの連打音でしょう。ここでのカスタの連打は音壁史上屈指の心地よさと言えるのでは?因みにサウンド的には大滝詠一、井上鑑両氏の師匠的存在であるフィルスペクターの
Ronettes / I Wonder辺りに強く影響を受けたものとなっていますので、合わせて聴いてみてください。既に多くの日本人にお馴染みになっている「幸せな結末」ですが、音壁史上に残る歴史的名演でもありますので、是非そのサウンド面に着目したうえで愛聴して欲しいものです。
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