旅する楽器~スラック・キー・ギター
『ハワイアン・スラック・キー・ギター』という楽器をご存知でしょうか。ぼくが初めて知ったのは数年前、ハワイへ行った頃でした。それまでハワイの楽器といえば、ウクレレくらいしか思い当たりませんでした。そんなある日、代官山のボンジュール・レコードで耳にした音楽。まるで波に揺られているかのような、心地よいアコギの音でした。そのギターは、『ハワイアン・スラック・キー・ギター』と呼ばれています。このギター、ルーツはなんとスペイン。かつて、スパニッシュ系移民がメキシコへガットギターを持ち込みました。その後、メキシカンがハワイへ持ち込んだとされています。現在のハワイアン・スラック・キー・ギターのスタイルを確立したのは、オープンチューニングの調法弦を使用し、独自の奏法を生み出した『ギャビー・パヒヌイ』と言われています。スペインから旅立ち、メキシコを経てハワイへ辿りつくまでの、数百年の旅を想像するだけで、ロマンを感じてしまいます。因に、ぼくが持っているCD『ハワイアン・スラック・キー・ギター・マスターズ』。S.K.ギタリストの名手たちによる、コンピ・アルバムです。レーベル・マスターは、あのジョージ・ウィンストン。相当この音楽に惚れ込んだようです。他にも、ライ・クーダーもハマったようですよ。ぼくは、アルバム収録曲で、ケオラ・ビーマーが弾く『エ・クウ・モーニング・デュー』がお気に入り。陸に上がっているときでも、この曲を聴くと、カヤッキングしてるときの感覚が蘇るから不思議。不快な暑さを、少しだけクールダウンさせてくれる、そんな音楽です。