藤巻自身の独白による歌詞の完成度の高さ
管理人です。北京五輪も中盤から後半に差し掛かってまいりました。日本勢の調子は今のところ微妙なようです。前回大会でかなり調子が良かった故に、ダウンした感じは否めないかと。獲得メダル個数は・・・おそらくこのままならば25個前後かという私の読みです。五輪のテーマソングが各局ごとにあります。4年前のNHKテーマソング「栄光の架橋」はインパクトがありました。例の名実況の影響もありますが、北川の得意とする種のメロディーがかなりハマってました。今年のNHKの曲はミスチルさんのGIFTです。この曲については他サイトで掘り下げられてると思われるのでこのサイトでは取り上げません。僕が取り上げるのはフジテレビのテーマ曲、レミオロメンの「もっと遠くへ」です。もともと僕はレミオロメンが相当好きなのですが、今回の歌詞もしっかりとした整合性を持ちながら、レミオロメン最大の特徴であるボーカル藤巻自身の独白的な歌詞が目立っています。独白的、と言うからには無論全てモノローグの歌詞です。ですが、そのモノローグの中にも他者とのつながりを示唆するフレーズがあります。あえて言うなら、藤巻の歌詞は他者を見つめて自分を映している歌詞です。その流れはデビュー以降非常に目立つようになりました。デビュー曲の「電話」はラブソングとしての楽曲ですが、あくまで自分を中心に描かれています。つまり、「君が~」「2人が~」ではなく、「僕が~」の調でひたすらに描かれた楽曲です。また、叙景が多いのがこのバンドの特徴です。無論この曲もそれが当てはまります。出だしの「こんなに暑い日が続いてる」というフレーズがその最たるものでしょう。「暑い日が続く」という自然の様子に、「こんなに」という言葉がつくだけで、状況の限定に自分自身の憂いや、倦怠感を混ぜて実に主観的なフレーズになっているのです。藤巻自身の歌い方も、倦怠感を帯びながら、力強い。粉雪のビッグヒットにより、彼らの状況も一変します。レミオロメン=粉雪という方程式が出来てしまいます。古来ファンにすれば、「粉雪」はそれまでのバラードとはまた違う、新しいタイプのバラードでした。サビの部分では、実はコードとメロディーが合っていない部分があります。(少し音楽をかじった者には分かります)それだけにインパクトがありました。ただ、歌詞は主観的かつ能動的なイメージのある、自分目線のラブソングでした。無論、この歌詞の重きはラブソングにはないのですが。次シングルの「太陽の下」で、彼らが提示したのは、粉雪ともまた違う、またしてもこれまでにないバラードでした。ピアノメインによる、「海のバラッド」を一工夫したような曲調でした。この曲も、歌詞は主観により描かれています。他人のことを心配したり、不安に思ったりする感情はなく、自分から能動的に動いていくフレーズで描かれた曲です。その後も、夜明けの情景に心の葛藤を重ねた「茜空」時代や、身の回りの情景に心の疾走を重ねた「RUN」夏の情景と自分の心情を広い語彙で表現した「蛍」などと、それぞれに濃い楽曲を作り出してきました。粉雪のビッグヒットから一発屋のイメージが強いかもしれませんが、実は彼らの売上は元々そこまで大したヒットではなく、かといって売れないわけでもない、、微妙な位置にあって、そこに戻っただけなので別に大きな変化はないのです。ですが、楽曲には大きな変化が見られました。それまでの楽曲以上に自らの葛藤が前面に押し出されてきたのです。(この動きは、自らの葛藤から他者を映すBUMP藤原とは逆)その延長に「Wonderful&Beautiful」があり、さらにその延長に在ったのが「もっと遠くへ」です。この曲はどうやら「アイランド」という楽曲と関連しているように思えます。孤独の葛藤を「海の中に浮かぶ島」という比喩的表現をして「アイランド」と名付けられたその楽曲は、歌詞の重み以上に行間の感情が重くのしかかるようにかかれています。一方、「もっと遠くへ」は重い荷物を振り払って行くような歌詞です。オリンピック選手には、出場においてさまざまな葛藤があったと思います。ですが、それらを乗り越えて、もっと遠くを目指す。藤巻自身の決意とも取れるこの楽曲、夏の祭典を彩る楽曲です。どうぞ聴いてみてはどうでしょうか。