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テーマ:おすすめ映画(4071)
カテゴリ:喫茶「話倶話倶」
今日、古河市で母親大会が開かれた。著名人を招いて講演会を催したり、分科会で様々なことを話し合ったりと、毎回たくさんの女性が参加して行われている。今回は、映画の上映。『父と暮せば』という宮沢りえ、原田芳雄出演の映画だ。あまり熱心な参加者ではない私だが、今回は映画ということで、楽しみにしていた。
「日本母親大会」のHPには、 【1954年に平塚らいてうらの「日本婦人の訴え」で国際民婦連は世界母親大会の開催を決定。このとき大会の基本的性格は、さまざまな階層の婦人をどのように団結させるかという立場から、“世界の母親の要求を話しあう大会とする”と定めた。らいてうは、“思想、信条、人種の別なく原子戦争の危険から子どもの生命を守る母親の大会を”と訴えた】 とある。 翌1955年には、第一回母親大会が東京で開催され、スイスでも世界大会が開かれた。 「生命を生みだす母親は 生命を育て 生命を守ることをのぞみます」をスローガンに、毎年全国各地で大会が開かれ、子供たちの幸せな未来を願う女性たちの草の根運動として定着している。 さて、『父と暮せば』を鑑賞してきた。ほとんどが宮沢りえと原田芳雄との会話だけという映画。 終戦から3年後の原爆から立ち直ろうとする広島が舞台。図書館に勤める美津江(宮沢りえ)は、原爆でたった一人の家族である父・竹造を喪う。自らも被爆するが、父の死に責任を感じ、「うちは幸せになったらいけんのじゃ」と自分を戒めながら生きている。図書館を訪れた木下青年(浅野忠信)に惹かれながらも、一人だけ幸せをつかむわけにはいかないと、思いを封じ込めようとする美津江。見かねた父親は、幽霊となって美津江の前に現れ、頑なな美津江の気持ちを解きほぐしていく。 二人の広島弁での掛け合いも楽しい。「何かようか、ここのか、とうか」など、おやじギャグを連発したり、美津江の気持ちをあの手この手でひきたてようとしたり、父と娘の文字通り血の通った会話が温かい。ともすれば暗く重くなりがちな題材だが、大上段からのメッセージなどは垣間見せることもなく、ただただ父と娘の対話のみに視点があてられている。にもかかわらず、見た者の胸にしっかりと深い悲しみをひたひたと感じさせ、言葉ではないメッセージを刻み込む。 原作者の井上ひさし氏は、現実に被爆した人の話を、美津江の言葉の中に織り込み、手記やドキュメントではなかなか手に取らないような人たちにも、無理なく伝えられるように描いている。悲劇を喜劇の中に埋め込んだことで、素直に心に響いてくる。 「おとったん」と呼びかける宮沢りえの笑顔や、娘を理解し叱咤激励し笑わせる原田芳雄の穏やかでありながら熱い思いを感じさせる演技が、政治的な見方をしがちになる原爆というものを、完全に庶民の視点に立った物語として心を打つ。 一緒に映画を観た戦争体験者の母は、目を潤ませながら、「戦争はいやだね」とぽつりと言った。昭和7年生まれの母は、多感な少女期に終戦を迎えた。今のようにメディアが発達していたわけではないので、ラジオや大人の話の中で原爆が投下されたことを知ったというが、連日B29の爆音を聞いていたにもかかわらず、幼い心にもいつもの爆撃ではない、ただ事ではないことが感じられたと言う。 戦争を知らない世代が7割を超えた現在、悲惨な事実があったことを伝える人は少なくなってきている。戦争体験者の話を直接聞くことができなくなるのも、もう間もなくだろう。あったことはあったこととしてきちんと知って学び、これからの未来をどうしていくのかを考えていかなくてはならない。 血が流れたり死体が転がったりするようなシーンが出てこないこの映画だが、限りなく深いメッセージが伝わってくる。悲惨な状況をこれでもかと目にすることにもきっと意味があるのだろうが、この映画のように、内側からせまって来るものには、かえって目を逸らすことなく向き合える何かがあるような気がする。 子供たちの幸せな未来を願う母親大会での上映。ほとんどが女性だったが、性別・年齢に関係なく、観てほしいなぁと感じた映画だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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