お産のリスク
昨日の本家あかいふうせんのひまわりさんの掲示板書き込みに寄せられたレスを見て、う~ん、改めて医者にとっても患者にとっても産科医療は非常に大変な時期に突入してきたなぁと感じた。今年になって、更に産婦人科医の減少が深刻な問題としてマスコミにも取り上げられるようになったけど、その背景には妊婦さんの「お産=生まれて当たり前」という認識不足と、「実際の現場での産科の事故件数の多さ=妊婦の認識不足による安易な訴訟」という問題があるのかも知れませんね。専門科別医療訴訟数を見ても産科は常にトップクラスです。実は、産科ではそれだけ日常的に悲劇は起こっている。そして、お産は病気ではないという認識に加え、産んで当たり前という感覚でいる患者にとっては、=医療ミス(訴訟)に繋がりやすいようです。でも、患者がすぐに訴訟を起すのも安易だけど、すぐ訴えられるからって産科医を辞めるというのも安易な気がするなぁ。と個人的に感じている。訴訟が多かろうと少なかろうと、訴えられる時点では別に過失でもなんでもないし、確かに金銭的、時間的負担は大きいかもしれないけど、毎年何件も抱えるもんでもないし、自分のやっている行為が正当なものならば何を恐れることもないと思う。それに、訴訟が増えるか否かは、産科のトラブル件数の多さも去ることながら、病院や保険所、マスコミがお産のリスクの説明をキチンとしていないからで、妊婦さんは「自然なお産」とか「豪華な設備」とか「出産までに準備するもの」とかばかり懸命に教育されていて、お産のリスクについては何にも理解されていないのも、安易な訴訟を増やす原因になっているのではないかと思う。私自身訴訟に踏み切るまでに半年の時間が過ぎた。それは、やっぱりお産に対して全く知識がなくて、過失の有無を問うためにそれだけの時間を要してしまった。その間は、やっぱり医師やスタッフが精一杯やってくれたということに感謝するだけだった。でも、精一杯やったと伝われば感謝して、伝わらなかったら訴える。救命できたら感謝して、亡くなったら訴えるってのはおかしいですよね。そんな事態になった要因に過失があるのかをキチンと見極めなくては・・・。うっかりミスを犯しておきながら、「いやぁ、大変な状況でしたが、スタッフが全員頑張ってなんとか命を取り留めましたよ。」なんて言われたら、患者や家族は一生懸命やってくれたことに気が行ってしまって患者や家族はミスに気づかず、医者にお礼を言ってしまう。しかし、最近訴訟が増えたのはそうやって騙される患者が減っただけで、決してミスが増えたわけじゃないのでしょう。だから、訴訟が多いからって産科医が辞めるのは、「今まではそうやって患者を騙せたけど、最近はごまかせないから辞める。」って言うのと同じような気がする。これから産科医を目指す方々には「産科医なんてやってられねぇっ!」てサジ投げる前に、お産のリスクをキチンと伝える土俵づくりを国全体でできるように努力してもらいたい。 それこそが、本当の医師と妊婦さんの信頼関係の構築に繋がると思うし、訴訟を減らす方法であると思う。(もちろんミスを0にする努力も忘れちゃいけないけど。)