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2012.03.27
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カテゴリ:映画・書籍

 零戦52丙型 森岡機と

「カミカゼ」「特攻」という言葉を聞くと、やはり重い気持ちになる方は多いかなと思います。
まぁ、私もそうなのですが。

ただ歴史というのは、風化してしまうと人間はまた過ちを犯す生き物なので、目をつぶってしまうには逃げているのと同じかなとも思います。

戦争ではありませんが、関東大震災(大正12(1923)年9月1日)の時も、「朝鮮人が暴動を起こした」というデマを元にした虐殺事件(内務省資料によると犠牲になった朝鮮人の数は死者231名、重軽傷者43名、また朝鮮人と間違われた日本人も死者59名、重軽傷43名とされています)がおきましたが、阪神・淡路大震災(平成7(1995)年1月17日)、昨年の東日本大震災(平成23(2011)年3月11日)では同様の事件は起きていません。

これは負の歴史をきちんと教えられ、反省と教訓が身についた成果ではないかなと思っています。

ですから、気持ちが鬱になりますが、特攻関係の本も、少しは目を通したと方がいいかもしれません。

というわけで、一冊入門書という感じで読めそうな本をご紹介したいと思います。

タイトルは、「戦艦ミズーリに突入した零戦―米海軍水兵が撮影した決定的瞬間」です。

特攻の写真というと、学校の資料集などでも出てくることが多い有名な写真があります。
それはアメリカの戦艦ミズーリへ零戦が体当たりする写真です。

ミズーリに体当たり.jpg

かなり有名な写真なので、見たことがある方は多いのではないでしょうか。

この写真は、シャッターを押すタイミングが、1秒前後に取れていたらこうまできれいに取れなかったと言われている決定的写真です。

話を本の紹介から少し離れて写真の興味深い点を解説しますと、写真手前に写っている高角砲と機銃座の米兵たちの見ていると思われる視線を追っていくと誰も零戦を見ていないことに気がつきます。つまり、突入してくる零戦に気がついていないのです。実際写真を撮ったレン・シュミット上等水兵は、特攻機を意識して撮影したのではなく、反射的に撮影した一枚だったようです。

突入してくる零戦の速度は時速500キロ以上、人間の視覚を超えている事がうかがえます。

と、話をこの本のご紹介に戻ります。この本は、ミズーリに突入した零戦のパイロットが誰だったかを追跡した渾身作です。

詳しい内容は本文に譲るとして、入門書としてお勧めの理由ですが、少々失礼な言い方をしますと、著者はさほど軍事知識がある方ではありません。

ですので慣れている方だと素通りしてしまい、一見さんお断り状態の軍事用語などを丁寧に調べて解説しています。

一例を挙げると、戦記物の資料を見ると爆戦という言葉が出てくることがあります。

これは爆装(爆弾を装備した)戦闘機の略なのですが、知識のある方は、「ああ爆弾吊しているのね」ですんなり通りすぎますが、詳しくない方だと「爆戦てなに? 普通の戦闘機とどう違うの?」と困惑してしまうかもしれません。

そういった用語を丁寧に解説されていますから、「軍事関係は読んだことないし、分からない専門用語ばかり・・・」という苦労は、かなり解消されていると思います(逆に詳しく知っている方からすると、間延びした感じを受けてしまいますが、これは仕方ありませんね)

また少々ネタばらしになってしまいますが、この本を読んで私が感銘を受けたのはミズーリ艦長ウィリアム・キャラハン大佐のヒューマニズム精神あふれる対応です。

回収された特攻機のパイロットの遺体(正確には上半身だけしかなかったようです)「この日本のパイロットは我々と同じ軍人である。生きている時は敵であっても今は違う。激しい対空砲火をかいくぐってここまで接近してきたパイロットの勇気と技量は、同じ武人として称賛に値する。よってこのパイロットに敬意を表し、水葬に付したい」と、乗員の反対を押し切って海軍葬に処しています。

彼の実兄ダニエル・キャラハン少将は、第3次ソロモン海戦(昭和17(1942)年11月12~15日)で日本軍と戦って戦死していますから、日本人に対して恨みを持っていてもおかしくなかったでしょう。しかし個人的な感情で目を曇らせることなく、崇高な行動を示してくれたことに率直に頭が下がりました。

そういった逸話も含めて、写真は有名でも、その背後にある経緯については余り知られていない事を実感しました。

興味を持った方はご一読してみてください。

それではまた。


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Last updated  2012.03.27 23:21:54
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