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カテゴリ:昭和期・第三の新人
『深い河』遠藤周作(講談社文庫) 上記本の読書報告の第2回目です。 しかし、例によって、まだ直接はこの本に触れておりません。 前回は「極めて難解な宗教論議」を致しておりました。(って、嘘です嘘ですー。) 前回の内容は簡単に言うと、頭が極めてアバウトにできている私は、キリスト教の入門書を読んでももう一つぴんとこず、その原因を不埒千万にも、入門書のせいだと考えたのでありました。 それは、一連の入門書と、以下の本を読み比べてそう思ったのでありました。この本です。 『遠藤周作で読むイエスと十二人の弟子』遠藤周作(新潮社) こんな表現を聞いたことがあるんですが、「遠藤キリスト教」と。 たぶん遠藤氏自身のエッセイか何かで、「遠藤キリスト教も、線香臭くなてきたなぁ」と友人に言われたとかの文脈でありましたか。 そういえば、遠藤氏の代表作『沈黙』は(遠藤氏の代表作というより日本のキリスト教作家全体の代表作)、かつてカソリック教会から禁書扱いされたと聞きますが、私の記憶違いでありましょうか。 それは遠藤周作の、「悩める無力なイエス・キリスト」理解ゆえですね。 実は、これが、僕はとても好きなんですねー。 「遠藤キリスト教」だと、僕にとっては、聖書記述が非常にしっくりするわけです。 例えばこんなところ。 イエスがいよいよ磔刑へのカウント・ダウン、エルサレムへやってきます。そしてイエスは、神殿の境内で商売をしていた者達に「ここから出ていけ。私の父の家で商売などするな」と言いながら、彼らの屋台や腰掛けをひっくり返します。 この場面、前回に触れました『図説・聖書物語新約編』では、こんな解説がはいっています。 「日頃は柔和で、謙遜であるイエス。そのイエスの激しい怒りの爆発に、弟子達は度肝を抜かれた。イエスの怒りは、だが、冷めてみれば、よくわかる。弟子達は、あらためてその勇気に感服した。」 しかし、「遠藤キリスト教」はこうです。 「そして三日目の水曜日、イエスは彼らしくないことをする。(中略)イエスはこの行動で自分が彼らの手によって捕縛されるのを願っておられたのではないだろうか。」 そして、イエスがなぜ死のうとしたかについて、 「現実的には無力で孤独な彼は自らの死によって、永遠に人間の同伴者となるという神の愛の教えを、そこに賭けたのである」と。 こういうイエス・キリスト理解は、おそらく日本的なんでしょうね。 異論がいっぱい出てきそうな、いえ、「異論」なんてレベルではなく、「断じて許せない」と考える人たちも沢山いるだろうなと、確かに思います。 でも僕は、明らかにこちらの理解の方が人間的であり、人間感情のあり方に沿っていると思います。僕は間違っているのでしょうか。 こんな、「遠藤キリスト教」が、僕は、とても好きです。 で、さて、そんな「遠藤キリスト教」理解の中、冒頭の小説『深い河』を読みました。 うーん、「遠藤キリスト教」、ますます好きですねー。 というより、考えれば、僕のキリスト教理解は、ほぼ「遠藤キリスト教」、つまり遠藤周作の『沈黙』をはじめとするいくつかの小説がベースで、それにちらほら別の知識が入った程度でしかありません。 遠藤キリスト教の定番、「悩めるイエス・キリスト」はこの作品にも十分反映しています。そしてそれが、僕にとってはとても面白いです。 しかし、この小説そのものは、少し薄味な気がしました。 主な登場人物5人が、それぞれ生と死、転生、神などの重い個人的課題を抱えてインドに集まるという話は、内容的に考えるとこの分量の1.5倍くらいは書き込めそうな気がします。 でもさすがに落としどころでは感動しました。読みながら何カ所かで目頭が熱くなりました。「遠藤キリスト教」まだまだ恐るべしであります。 ところで、やっぱりインドって、今でもすごいところなんでしょうかね。 いろんな人が行って、いろんな事を考えたようですが、今でもそんなカオスの塊の様な所なんでしょうか。ちょっと「怖い物見たさ」みたいな興味もありますね。 では、今回はこの辺で。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 /font> にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.08.04 06:19:47
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