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カテゴリ:大正期・私小説
『子を貸し屋』宇野浩二(新潮文庫) 上記本の紹介の第2回目であります。 この本の中から特に特徴的な『あの頃の事』という短編小説を取り上げ、以下の2点にポイントを置いて考えていこうと思っています。 (1)強烈な貧乏話 (2)極めて特徴的な文体 まず「貧乏話」であります。 以前にも少し触れたかと思いますが、「私小説の三大テーマ」というのがありまして、これです。 1.女 2.病 3.貧 なるほど、こうして並べてみますと、人生のある種の側面をこの三つで言い尽くしているような気がしますね。うまく並べたものです。 で、今回の小説のポイント・その1が、「貧=貧乏話」であります。 それはそれは、徹底した貧乏話でありまして、数ヶ月間全く収入がないという状況なんかが書かれてあります。あげくにこんな感想があります。 「人間はなかなか餓死しないものだ。」 「おーい、そんな他人事みたいに言うてる場合やないやろー!」 って、思わず突っ込んでしまいました。 太宰治は、或る小説内で(『貧乏学生』?)、 「貧を衒う。安易なヒロイズムだ。」と書きましたが、やはり小説世界に「貧乏話」は山のようにあります。 上記に、「私小説三大テーマ」とまとめましたが、良く考えてみると、「貧」だけがちょっと違う感じがするんですが、そんな事ありませんかね。 「女」と「病」ってのは、なんか「瀬戸際」じゃありませんかね。少なくとも「病」はそうですよね。 しかし、「貧」は、テーマの特徴として、 1.ユーモアが漂う。 2.どこか、「ゆとり」が感じられる。 3.読者が、何か少し「優越感」に浸れそうだ。 と、まとめてみたんですが、当たっていませんか? こんな感じですよね。 上記に引用した小説中の感想にも、充分ユーモアが感じられますよね。これは、おそらく「客観性」です。 優れた小説には、その展開に対して、何重にも客観性を保障する描写があるものですが、それがユーモアに包まれている時、読者は、作品への高評価と、筆者の強靱さとを感じるものであります。 そしてこれが、僕が宇野浩二に「美味しい匂いがする作家」を感じた理由でもありました。 「貧」をテーマに選ぶと言う事は、「ユーモア」を作品の大きな特徴とするという事であります。さらに、ではなぜ「ユーモア」を選ぶのかというと、それは、自分の小説観の核心が、そこにあると筆者が認識しているという事であります。 例えば、病院内において、重症患者の方が「羽振りが利く」ように(あ、これ表現に妥当性を欠くような気がします)、「貧」は、それが強烈・徹底的であるほど面白い。 太宰が「安易なヒロイズムだ」と説こうが、「貧乏小説」がなくならないのはむべなるかなであります。 (とはいえ、プロレタリア小説なんかの「貧乏話」はそう遊んでばかりはいられません。これにはまた別の「ルール」がありますが、しかし今は、おいておきます。でも一つだけ。太宰が述べようとしているのは、きっとこの辺のことです。) さて、次が「極めて特徴的に文体」でありますが、これが、なかなかやっかいそうです。 以下、次回に。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 /font> にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.08.23 07:19:13
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