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カテゴリ:昭和期・第三の新人
『幽霊』北杜夫(新潮文庫) 北杜夫氏であります。 この方は、今も一定の愛読者を持ち続けていらっしゃる人ですね。 現在の出版状況などにはとんと無知な僕に、なぜそんなことがわかるのかと申しますと、いつ、どこのブックオフに行っても、決して狭くはない一定のスペースで、北杜夫の文庫本が並んでいるからであります。 いうまでもありませんが、たくさん古書業界に流通している本は、やはりたくさん売れている本でもありますね。 まず『どくとるマンボウシリーズ』ですかね。 高校時代、僕も結構たくさん読みました。なかんずく『どくとるマンボウ青春期』については、書かれている内容への憧れとともに、何度か読み返しました。 で、読者とはわがままなもので、その後、勝手に「卒業」したとか思ってしまうわけですね、何の根拠もなく。 「俺は北杜夫は卒業した」などと言って。 僕は、別に卒業したとは思いませんでしたが、その後なんとなく、北杜夫の作品は読みませんでした。 久しぶりに読んだのは、実はひょんなことからです。 時々、いわゆる「軽い」系のエッセイ等が読みたくなる時があります。 そんな時のことです。たまたま北杜夫氏の娘さんのエッセイを読んだんですね。それも、その「斉藤由香」という人が、北杜夫の娘とは知らないで、ブックオフで105円で買いました。こんな本です。 『窓際OLトホホな朝ウフフの夜』斉藤由香(新潮文庫) 読み進んでいくうちに作者が北杜夫の娘と分かってからも、僕は別に感心することもなかったですが(でも楽しく読みました)、しかし父親に関する部分だけは、なかなか印象に残りました。 (この、「父親-娘」という文人の血脈は、以前も少し触れましたが、森鴎外、幸田露伴、太宰治等、結構たくさん見られるパターンでありますね。) その父を巡るエッセイの中に、私は窓際OLだが、父も、かつては芥川賞を貰ったりしていたが、現在は窓際小説家であるというニュアンスの一文がありまして、私は昔とても面白く読んだ『どくとるマンボウ青春記』をなつかしく思い出しました。 で、無性に北杜夫が読みたくなって、つい、買ったままずーっと読んでいなかった本を読み始めたというわけです。これです。 『楡家の人々・上下』北杜夫(新潮文庫) うーん、読み始めて直ぐに気が付いたんですが、うーん、これはなかなか恐るべき大変な小説ではないか、と。 これはひょっとして、とんでもない巨大な「鉱脈」にぶち当たったんじゃないかという、ぞくぞくするような期待感を持ちました。 新潮文庫は下巻の表紙のカバー裏に、(異例にも)三島由紀夫が紹介文を書いています。三島らしい名文なんで、一部引用してみますね。 この小説の出現によって、日本文学は、真に市民的な作品をはじめて持ち、小説というものの正統性(オーソドクシー)を証明するのは、その市民性に他ならないことを学んだといえる。(中略)あらゆる行が具体的なイメージによって堅固に裏打ちされ、ユーモアに富み、追憶の中からすさまじい現実が徐々に立上るこの小説は、終始楡一族をめぐって展開しながら、一脳病院の年代記が、ついには日本全体の時代と運命を象徴するものとなる。しかも叙述にはゆるみがなく、二千枚に垂んとする長編が、尽きざる興味を以て読みとおすことができる。 どうです。いかにも三島らしい「才気走った」紹介文ですね。僕も久しぶりに三島の文章を読みましたが、懐かしくも、くどいばかりに丁寧かつ明晰な文章であります。 で、さて、『楡家の人々』ですが、三島の紹介文のごとく、実に小説として「正統」的であります。 しかし、この小説の一般的評価ってのは、どんなものなんでしょう。 これだけの小説ですから、評価が低いとは思えませんが、しかし日本文学史は、このような「風俗小説」に対して、ずっと評価が低かったのは事実です。 その傾向は、別にこの本にだけのものではないでしょうが、この本も「埋もれた」「忘れられた」本になってはいないでしょうね。 そんなことのないことを願うばかりですが、なんと言っても、この本はいかにも小説らしい小説、小説好きにとっては「贅沢な晩餐」のような小説であります。 この小説は間違いなく、近代日本文学史を代表する傑作だと思います。 ところで、その後の私の北杜夫読書ですが、これもさらに展開しまして、そして冒頭の小説にぶつかるわけですが、以下、次回に。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 /font> にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.09.03 06:20:05
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