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カテゴリ:昭和期・第三の新人
『海と毒薬』遠藤周作(新潮文庫) これはごく個人的な話なんですが、いろんな作家の小説を読んでいると、小説家について、「この人は人間的に偉い人だなー」と素直に感心をしてしまう方がいらっしゃいます。 これは、好みの問題なんでしょうが、僕の場合は、僕自身がわりと古くさい人間であるからでしょうか、「人格者」に憧れるような所があります。 でも、当たり前といえば当たり前ですが、小説家的才能と人格者であることは、必ずしもパラレルではありません。 筒井康隆氏なんかも、そんなの当然じゃないかというようなことを語っていらっしゃいます。人格者に小説が書けるものか、と。 それはそれで、理解はできるんですが、一方で(これこそが古くさい文学観なのかも知れませんが)特に古い小説家については、つい「人格者」と重ねてしまいがちになります。 とはいえ、さらによく考えると、その小説家について、個人的なことはほとんど何も知らず、僕が勝手に作り上げている「人格者像」にすぎないことくらいは、自分でも分かってはいるんですけれどもね。 さて、僕がそんな風に勝手に人格者的に考えている作家の一人が、この遠藤周作氏であります。 僕は好きになると、次々とその作家の作品を読んでいくタイプでありますが、そんな意味でいいますと、実はコンプリートするほど遠藤氏の小説をことごとく読んでいるわけではありません。 ただ、読んだ小説のどれもが、ずっしりと誠実で重々しく(逆に言えばそれ故に全作品を手に取るにはちょっと大変そうで)、僕自身の生き方や価値観に、深く食い込んでくるような作品ばかりでありました。 そんな遠藤氏の代表作の一つであります。 内容は、第二次世界大戦末期、九州のある大学医学部で米軍捕虜を生体解剖するというストーリーであります。 このショッキングな内容に、キリスト教作家である遠藤氏の終生のテーマである「罪」とは何か、「宗教」とは何かが、絡められながら描かれます。 「死ぬことがきまっても、殺す権利はだれにもありませんよ。神さまがこわくないのですか。あなたは神さまの罰を信じないのですか」 (これをやった後、俺は心の呵責に悩まされるやろか。自分の犯した殺人に震えおののくのやろか。生きた人間を生きたまま殺す。こんな大それた行為を果したあと、俺は生涯くるしむやろか) 「神というものはあるのかなあ」 「神?」 「なんや、まあヘンな話やけど、こう、人間は自分を押しながすものから--運命というんやろうが、どうしても脱れられんやろ。そういうものから自由にしてくれるものを神とよぶならばや」 「さあ、俺にはわからん」火口の消えた煙草を机の上にのせて勝呂は答えた。 「俺にはもう神があっても、なくてもどうでもいいんや」 うーん、こうして少し紹介しただけで、テーマがいかに重く、そしてこんなテーマを小説として正面から取り組んでいこうと考える作家が、いかに「倫理的」な存在であるかが分かりますよねー。 実は、僕はちょっとこの小説の読書報告から逃げているんですね。 それは、テーマが重すぎて、うまく書けそうもないからであります。 僕は大概ぐーたらな人間でありましてー、でも心の中には倫理的に誠実に生きていきたいという思いが、やはりこっそりあるんですね。 ただ残念なことに、力及ばず、その思いが現実の生き方にサッパリ反映される事なく今日に至っておりますことは、誠に慚愧に耐えないものであります。 ありますがー、そこは小人の哀しみ、普段はそんなことどこ吹く風でぼーーっと生きております。 そんな人間にとって遠藤周作を読むことは、うーん、この際はっきり言いますと、「罪滅ぼし」(?)なんでしょうかねー。 「罪滅ぼし」 上記に抜き出した本文ですが、こうして連続して抜き出すと、生硬な語り口のように見えますが、実際はストーリーの中にさりげなく紛れ込んでいます。 そして、こんなフレーズに出会うことこそが、「罪滅ぼし」といってもいいのではありますが、やはり遠藤周作作品を読む大きな感動でもあります。 いえ、掛け値なしに、本当。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 にほんブログ村 /font> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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