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2010.08.11
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  『無名作家の日記』菊池寛(岩波文庫)

 菊池寛という人は、偉い人なんですよね。
 日本の近代「文壇」を作った人なんですよね。
 作家と言う職業に対する社会的評価が低い時に、大いに孤軍奮闘努力し、その向上に勤め、そしてまー、その社会的評価は現在に至る、と。

 ただ、日本の近代「文壇」を作り上げた「才能」と、いわゆる文学的才能は、別物ですよね、当たり前でしょうが。菊池寛自身も、そんなことを書いていますしね。

 (まれに、実業家=企業人=経済人的な才能と、文学的な才能の両者を併せ持つという方もいらっしゃって、例えば辻井喬とか水上滝太郎とかがそんな方でしょうが、全くすごいですね。)

 さて、今回は、そんな菊池寛の「現代物」短編集を読んでみました。
 で、感想ですが、うーーん、ちょっと困っているんですがー、まー、素人のお気楽発言と言うことで許していただくとして言っちゃいますと、とりあえず同じ菊池寛の「時代物」小説よりも、ちょっと落ちるんじゃないか、と。

 なぜそんな風に感じたのかを考えてみたんですけれどね、考えていると少し前に流行った言葉を思い出しました。

  「上から目線」

 筆者の「テーマ小説」の特徴は、大体二つにまとめられると思います。

  (1)リアリズム  (2)モラリズム

 この二つが、パチッと面白く作品にフィットする時もあるんですが、そういうのは、わりと「時代物」に多いように思います。
 
 一方、(これは私の好みもあるかなとは思いますが)本短編集で言えば『慎ましき配偶』などという作品は、(私にとっては)何とも後味の悪い、「イヤーな」作品でありました。

 簡単にこの小説のテーマを書きますと「醜女は救われるか」ということです。
 もちろん、ストーリーとしては、救われるのでしょうが、そもそもこんなテーマ自体が、はっきり言って「時代的限界」を持ちますよね。
 それに、この小説について言えば、それが菊池の「リアリズム」のせいかどうか、とにかくユーモアの全く感じられないことが、とっても苦ーい、後味の悪ーいものを感じさせます。
 そして(ちょっとしつこいですが)、そこに「上から目線」が加わっていきます。

 うーん、ここまで書いてきて、ひょっとしたら、私は全く読み違えているのかしらと、少し不安になってきました。
 文壇の大御所にそんな言い方はないだろうといわれると、「すんません」とすぐ謝る気もするんですがー。
 ただ、この岩波文庫の解説には、広津和郎の書いたこんな文章が引用されています。

 中には幾つかは面白いと思つたものもあつたが、その大部分は菊池君の一種の明敏な頭で思ひついたテーマで、そのテーマを見つけると、それを作品の結末の目標に置いて、後はそこまで如何にうまく辿りつくかといふだけが見せどころであるやうなものが多かつたので、そこから深い味ひは私には感じられなかつた。さうしたテーマ小説の多くをイゴイズムの解剖だなどと賞讃してゐる批評家もあつたが、それは自己心内のイゴイズムと格闘してゐるといふやうなものではなく、人間の本心にはさうしたイゴイズムがあるといふ事を、手軽につまんで見せてゐる程度に過ぎないものであつた。

 うーん、上手に書きますよねー。
 「深い味ひ」とか、「手軽につまんで」とかそんな言葉の中に、私の感じたことがそのまま表されているように思いました。

 しかし、このような作品から読みとれる菊池寛の、「自分が、作家も含めて、国民を広く啓蒙するのだ」という気概こそが、確かに日本の近代「文壇」を作り出した、その大きな力だったんですよね。

 「君、この上に、まだ何かいるの? 芸術性って?」

 ……いえ、もちろんそれは、菊池寛の偉大なる業績以外の何ものでもありません。


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Last updated  2010.08.11 05:50:38
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