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2011.11.23
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カテゴリ:明治~・劇作家

  『ヒモのはなし』つかこうへい(角川書店)

 さて、上記戯曲の読書報告の後半であります。
 前半は、本作内容には全く触れず、変な方向にどんどん話が横滑りして収拾がつかなくなったところで終わってしまいました。どうもごめんなさい。(でもいつもの通りかな。)

 実は前回言っていたことは「デートDV」についてでありました。
 彼氏または彼女からひどいことをされても、我慢するのが愛情だと思うのは間違いであるという教えに対して、真実100%私は賛同するものではありますが、なぜかそう考えた後に一抹の違和感が残ります。
 もちろんその違和感を、人が生きて人を愛するが故の不条理であると、思いっきり拡げて解釈してしまうとそれなりに納得はできるんですが、そこまで拡げきらない部分で、やはり違和感が残ってしまいます。

 こんな事例について前回書きました。
 男性も被害者になりうると言うことで、例えば携帯電話の中の女性のアドレスを「私と付き合ってるんだから私以外の女の子のアドレスは要らないわよね」とか言われて消されてしまうという事例でした。

 仮に「デートDV撲滅」ということを、この事例で考えてみます。
 アドレスを消す彼女の行動を拒んで彼女を説得しようとした時、もし彼女が、

 「そやけどあんたの携帯に他の女のアドレスあるのんわたしイヤやねん。絶対イヤやねん。許されへんねん。あんたのことが好きやねん。お願いやから他の女のアドレス消してちょうだい、お願いやねん、お願いやねん、一生のお願いやねん、あんたのことが死ぬほど好きやねん。」

 と(別に関西弁でなくてももちろんええですがー)言って泣き出したら、どうするか。
 私なら「……ま、ええか」と、彼女の行動を許してしまうように気がするんですが、それがいかんのでしょうかねー。(たぶんいけないんでしょうね。)
 しかし私はこの感じ方の発展形として、前回さらに以下の暴論を展開してしまいました。

 「捨てられることが、本人にとっては一番の『DV』である。」

 うーん、暴論ですなー。
 感情と理性がごちゃごちゃになっていますねー。
 ただ私が、やや感情の側に偏って立って思うことは、男女の愛情というものは一つのスローガンで整理してしまうにはあまりに分からないことがありすぎるということであります。まして、「デートDV」の主な対象者としての十代、二十代の年齢においては。

学生 明美さんはやっぱり、シゲさんのことが好きなんですね。愛して
   るんですよ。その気持ちを大切にした方がいいと思うな、僕は。
明美 いい年をした男と女がホレたハレたじゃないじゃない。ガッツじ
   ゃないの。ガッツでどこまでふんばるかじゃないの。ふみとどま
   るかじゃないの。
学生 なんかほっとしました。
明美 あんたすぐ傷ついちゃうのね。傷つくの上手ね。それだけが取り
   柄ね。おまえは俺の体が忘れられない女になったのサ。言えるか
   ね、あんた。ウソでもいいから。おまえは俺の体が忘れられない
   女になったのサ。言えるかね。
学生 言えませんよ。社会人ですから。


 「前向きなマゾヒズム・建設的なみじめさ」といわれるつか作品の、この台詞などに見られる恋愛の醍醐味は、私の中では、どうしても「デートDV」の概念とそぐわないものが残ってしまいます。
 しかしやはり、私の考え方感じ方が、間違っているんでしょうね。(重ねて、肉体的精神的暴力については絶対に否定するものではありますが。)

 以下はジョーダンとして書くんですがー、「デートDV」だけに関して、男子の被害者はナシ、ってルールは。
 ……いえ、ダメですダメです分かっています、……でもねー。

 さらにしつこくもう一言。
 例えば志賀直哉の『和解』、芹沢光治良の『結婚』、阿川弘之の『舷燈』なんか(あ、見事に志賀直哉系列だ)、もう全編DVだらけの小説でありますね。
 時代とは言いながら、日本文学も困ったものです。


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Last updated  2011.11.23 07:56:57
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