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analog純文

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2013.02.11
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  『風媒花』武田泰淳(講談社文芸文庫)

 ……ううう、う。……うう。
 何のうめきかと言いますと、いえ、別にうめくほどのことでもないんですが、花粉症であります。
 もはや国民病と呼ばれて久しく、私もその例に漏れず花粉症でありまして、そろそろこの季節なんですよねー。辛いんですよねー。

 寝室の私の枕元には花粉症の点鼻薬が置いてあるのですが、ひどい時には、これがなければ夜中に窒息しそうになるんですね。
 息が詰まって、はっと目が覚める、急いで点鼻薬を施すという、なんか、麻薬中毒患者のような状況であります。

 そもそも花粉症とは何かというと、取りあえずシロートとしての理解では、花粉が鼻とか眼とかの粘膜にくっついて起こる反応である、と。
 とまー、義務教育終了以前の答えしか知らない愚かなわたくしでありますが、その際、そんな風にして鼻にくっつく花粉が、例のスギ花粉であったりするという。

 こいつやこいつや、こいつがわるものなんですよねー。
 しかし、まー、本当はこいつは別にわるものでも何でもない、と。
 そういう形で、自らの子孫を残すという戦略を採ったに過ぎない、と。
 そして、そんな「戦略」をとった植物のことを、「風媒花」と呼ぶ。
 おや、知らぬ間に上手につながりました。(……っと、少々シラジラしい)

 と言うわけで、今回の読書報告は『風媒花』なんですが、このタイトルが何を象徴しているかは、分かるようでよく分かりません、少なくとも私にはよく分からなかったんですが、どうなんでしょう。

 女性の主な登場人物が2人いまして、この名前が「蜜枝」と「桃代」。この名前は、どう考えても「虫媒花」関係の名前ですよねー。
 とすると、残りの男の登場人物たちが「風媒花」なのかしらん。
 ……うーん、ちょっと違う感じがするんですが、よく分かりません。

 しかし、『風媒花』というタイトルはなかなか雰囲気があっていいタイトルだと、分からないままに無責任に私は思います。
 この小説の舞台が昭和20年代の半ばで、戦後のどさくさから朝鮮戦争が起こって、なんかきな臭い事件が一気に吹き出したり、「赤化」とか「反動」とかが渦巻く時代でありますが、この時代の小説って、どうなんでしょう、あまり無いように思うのですが、私が知らないだけでありましょうか。

 文学史的思潮区分である「第1次戦後派・第2次戦後派」と呼ばれる方々の小説って、少し(かなり)苦手ですしねー。(三島由紀夫だけですかね、私が少し読んでいるのは。)
 本当は、そんな時代を描いた作品も多くあるのかも知れませんが、とにかく私が知っているのは、この度読んだ『風媒花』と、あと一つ、堀田善衛の『広場の孤独』だけであります。

 ところが、この『広場の孤独』というタイトルも、なかなかいーですよねー。
 『風媒花』と、双璧であります。

 ということで、花粉症から入ってやっとタイトルに辿りついたわけですが、何をうろうろと回りばかりをぐるぐると巡っているかと申しますと、もうお気づきの方もいらっしゃると思いますが、この小説が、わたくし、よく分からないんですねー。
 ちっとも、面白くないんですよねー。

 かつて新潮文庫で読んだ『ひかりごけ』。これは、とっても面白かったです。
 『風媒花』もかつては新潮文庫に入っていたと聞きますが、『ひかりごけ』は残っているのに『風媒花』は絶版で、私が読んだのは、あたかも岩波文庫の向こうを張っておよそ売れそうもない作品を並べる講談社文芸文庫であります。(でも、新潮文庫の判断はたぶん正しい、と私は考えるんですがー)

 昭和20年代の知識人にとって、よかれ悪しかれ一つのテーマだったのが「中国」という新生国家であり、それは憧れでもありつつ、一方で複雑な感情を内向せざるを得ない国であったようです。
 しかし、21世紀も10年以上が過ぎた現在、日本と中国は、また複雑微妙な関係をクローズアップしつつあるように思います。

 ただ、私のように、虚仮の一念のように日本文学に興味を持っていますと、さほど知りはしないまでも古典作品の中に現れる中国=漢文の偉大さに、やはり心撃たれることは多くあります。
 そしてその心を持って、今の中国と日本の何とも微妙な関係を考えますと、もー、我が頭脳の混乱は収拾する場を持たず、しかしそんなとき、このように中国が間違いなくあこがれの一部であったという時代の作品は、なんだか少しヘンに「新鮮」にも感じるのでありました。


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Last updated  2013.02.11 14:23:15
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