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2013.04.21
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  『闇のなかの祝祭』吉行淳之介(講談社文庫)

 確か、だいぶ以前の村上春樹のエッセイの中に、吉行淳之介が出てきていたのがあったように覚えているのですが。
 吉行淳之介とバーに行って、吉行がいろいろと楽しい話をバーの女性にしながら、実に見事にさりげなく彼女たちのオッパイをさわるという、そんな話でありました。

 うーん、そんな方って、やはりいらっしゃるんでしょうね。
 これもだいぶ昔に、吉行のエッセイか何かで読んだ記憶なんですが、さらりと女の子を触るのにも修練が必要であると言うことで、「モモヒザ3年シリ8年」と。

 とにかくそんな方が、作者である、と。
 だからといって、それが作品と関係あるかどうかは全く分かりませんが、しかしそんなくらいの予備知識があったほうが、例えばこんな部分なんかは読みやすいような気がします。
 主人公の男性が、女房の「草子」との過去の会話を思い出すシーンです。

 なるほど、昨夜のことは草子には話しはしなかったが、彼女のことは、時折、話していた。それも、露骨な調子で、話しをした。
「会社に、いい女の子がいてな、ひとつクドいてやろうとおもっているんだ」
 そのようなことを言うと、草子は笑い顔になって、
「そう、それじゃ会社に行くのが愉しいでしょう」


 その後主人公はこの会社の女性と肉体関係を結ぶようになり、女房が会社に嫌がらせの電話を掛けてくるようになり、そして主人公はそんな女房のことをけしからんと考えるんですね。

 ……、んー、こんな主人公の感受性は、いかがなもんでしょうかね。

 実は、この作品の中心となるのは別の女性で、奈々子という女優なんですが、この女性が主人公とぞっこんの関係になり、女房との離婚を迫るんですね。そうすると主人公はこんな風に言います。

 「しかし、女房と別れて、それでどうするんだ」
 「どうするといって……」
 「どんな女でも、結婚して二年も経てば、同じことだよ。みんな同じになってしまうものさ」


 ……よくもまー、こんな事をいうもんだと思うんですが、そんなことないでしょうか。

 その後、女房はこのいざこざが心労となって精神科の病院に入院することになります。担当の女医と主人公はこんな会話を交わします。

 「こういうことは、ご主人が協力して、奥さまの気持ちが鎮まるようにしてあげなくてはいけませんのよ」
 「しかし、気持ちを鎮めるためには、私がもう一人の女性と別れなくてはならぬわけで、それはできないのです」


 そんなことをしている内に、今度は愛人の奈々子が主人公に妊娠を告げます。

 適当な病院を見付けることは困難だ。草子にも、三度掻爬を受けさせた。二度目三度目のときは、その処置は比較的容易だったが、最初は戦後まもなくで、掻爬を施してくれる病院を見付けるのは難しかった。見知らぬ街を、病院を探してあてもなく一人で歩きまわったときの暗い重苦しい気持を、彼は思い出した。そのときは、草子も中絶することに積極的だった。しかし、三度目のときは、彼が説得して手術を受けさせた。四度目に妊娠したときは、自殺未遂から月日があまり経っていなかった。彼は、草子の神経をなだめるため、子供をつくることを決心した。そのときには、奈々子と深い関係が生ずることは予想できなかったのだ。

 ……。んー、こういうのって、本当にどんなもんなんでしょうか。

 小説の種類に「悪漢小説(ピカレスクロマン)」というのがあって、犯罪者が主人公である(ギャングが主人公とか)というのは、結構あったりします。
 そういえば、冒頭で触れた村上春樹の『1Q84』という小説は、ヒロインがプロの殺し屋でした。
 だから、主人公が悪人であるからと言って、それは小説の評価とは全く関係ないのですが、わたくし、個人的にとっても思うんですが、今回の小説の主人公は、とっても「悪もの」なんじゃないか、と。

 たぶんこの女性に対する「アモラル」な感覚は、時代的なものもあるのだとは思います(初出は昭和三十六年であります)。
 しかし例えば、最後に引用した個所に出てくる主人公は、女房に三度も掻爬をさせ、そして、愛人に妊娠を告げられるととたんに動揺します。これは現代から考えると、主人公は、大人として社会人としての資質あるいは成熟度に、かなり難があるとしか思えません。なぜ、きちんと避妊をしないのでしょうか。

 主人公は一種のピカロなのかもしれませんが、そして、現在の眼で過去の時代を断罪することはフェアではないのですが、私としてはどうもこの主人公の「たわいない愚かさ」が気になって仕方がありませんでした。


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Last updated  2013.04.21 20:11:23
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