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カテゴリ:明治~・劇作家
『平田オリザ戯曲集2転校生』平田オリザ(晩聲社) 人に勧められて、平田オリザの新書を一冊読みました。ひと言で言えば、日本国の文化政策についての提言という内容の本でしたが、確かになかなか興味深い本でした。 そこで、筆者平田オリザについて少しググッてみると、とても評価の高い方であることが分かりました。 本職が劇作家並びに演出家でいらっしゃることは、何となく知っていましたが、その評価がまた高い。(でもこれはまー、当然ですかね。本職の評価がまず高いから、それ以外の部分についても高くなるんでしょうね。) 新しい日本の演劇世界を拓いた人物のごとき高評価であります。 「現代口語演劇」とか「静かなる演劇」とかいう言葉で、その評価の一端が書かれてありましたが、しかし私は今まで氏の戯曲を一冊も読んだことがなかったので、これは読まねばならないだろうと思いました。 実は私は演劇青年であった時期などないのですが、それでも戯曲にけっこうはまった時期がありました。 今ではたぶん年に2回くらいしかお芝居も見に行かなくなってしまいましたが、それでも現代の演劇について、興味引かれるものを持ち続けているつもりです。 ただ現代演劇は、こと「戯曲」というレベルで論じることはもはやできなくなってしまい(あたかも、CD鑑賞だけのオペラ理解が不可能なように)、だんだんと戯曲も読まなくなってきました。(第一書かれていることの意味が、戯曲の活字からだけではさっぱり分かりません。) などという経緯もありましたが、ともあれこの度、一冊(図書館で借りて)読んでみました。 ……で、どうなんだ、と考えると、……うーん、とつい唸ってしまうのですが、……、あ、それよりまず、この演劇は1994年に青山円形劇場で初演が行われたそうですが、田舎者の私は「円形劇場」なるものが東京にあることを知らず、まずそのことを一人おもしろがりました。 なるほど戯曲のト書きにも、第一場から第四場まで、順に「東西南北」の方を向いてしゃべることになっています。 次におもしろがったのはその本の表記のスタイルで、3段組になっています。 3段組になっているといっても、内容の重い全集本などにあるような中身のみっちり詰まった3段組ではなくて、3段にそれぞれ書かれたセリフは、それを縦に貫ぬく同一時間に発声するという仕組みになっています。 と、この2つをまず私はおもしろがったのですが、すでにもうここから極めてオリジナリティの高い筆者の演劇が浮かんできます。それは、 1、セリフは観客に向かってしゃべられるわけではない、ということ。 (上記のシステムだと、一人の観客に向かって発声されるセリフは全体の1/4しかありません。) 2、少なくないセリフは同時に複数発声される、ということ。 これはいったいどんな舞台ができていくのだろうかと思いつつ読み続けました。 ほぼ、1時間の舞台だそうです。ということは戯曲もさほど長くなく、すぐに読めます。 私は2回、読んでみました。 というのも、まずストーリー的にいえば、大きな事件や展開はなく、よく似た感じの文学作品を思い浮かべると、「ミニマリスム」と呼ばれた小説、例えば保坂和志の小説(氏の最近の作品は私は全く知りませんが)のような感じでした。 私はこのタイプの小説は別に嫌いじゃないので、けっこう楽しく雰囲気を読んでいたのですが、でもこのタイプの作品は、「わかった」という感じにはなりません。 だから、とりあえず2回読みました。 上記に、保坂和志の小説みたいと書きましたが、保坂和志の小説には確かに全く「現実の裂け目」めいたものはでてきません(たいていの小説は何らかの現実の裂け目を設定し、それを梃子に何かを語っていくように思います)が、この戯曲にはあります。 それは、「謎の転校生」です。 なぜこの学校にやってきたのかまるで分からない(転校生自身にも分からないとなっています)転校生がやってくるという「裂け目」です。しかしストーリーは、それを梃子にする、あるいはその謎解きをする、という方向には全く進みません。それは、ほぼ運命論的な転校生の存在であるようです。 で、実は、その「運命論的」なセリフは、いろんな所に散りばめられたりしています。 例えば、赤ん坊は何も知らないで生まれてくるとか、カフカの『変身』のザムザが死んだ時、家族はしょうがないかなって感じていたとか、赤ん坊が生まれるHOWはわかるけれどWHYはわからないとか、ふっと何かが横切ったような感じのするセリフがあります。 そこまででいいのかなとも思いますが、でももう少ししっかりした形として理解したいと思いませんか。 そこで私は、急遽、今度は平田オリザの演劇理論関係の本を2冊読んでみました。
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