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カテゴリ:大正期・新現実主義
『羅生門・鼻・芋粥・偸盗』芥川龍之介(岩波文庫) 少し前に本ブログで、中島敦の「山月記」についてだらだらと調べたことを「剽窃」まがいに報告しました。そうしたら、友人の高校の国語教師が面白がってくれて、私に教えてほしいことがあると言い出しまして、それがこの芥川龍之介の「羅生門」のことでありました。 なるほど、私が高校生の頃から、高校一年生の国語の小説教材は「羅生門」、二年生が「山月記」だったと思います。 で、何が聞きたいのかと尋ねますと、彼はさすがに授業をしているだけあって、ちょっと「プロっぽい」ことを言っていました。 「あの下人は、なぜ太刀を持っているのか。」 ね。ちょっと、プロっぽいでしょ。すぐに返事ができそうにない質問でしょ。 そこで私は、まーそれは、その頃の「下人」「太刀」の在り方についての歴史的な、いや民俗学的な問題かな、後は、ふにゃふにゃとごまかして、まー、調べておきますと言いました。 しかし、下人がなぜ太刀を持っているかなんて、そんなことまで調べている人なんかいないだろうと何気なくググッでみますと、えー、いましたよ、こんな論文がヒットしました。 「芥川龍之介『羅生門』論――下人の太刀について」日置俊次 ……しかし、便利な時代になったもんですねー。すぐにこんな論文のありかがわかるわけですから。 ということで、まずこの文章を読みました。 ところが、私に「羅生門」の基本的な知識がないもので、あまりわからなかったりしたんですね。 で、仕方がないので、図書館に行きまして、実に適当に芥川関係図書を借りてきました。 で、読みました。しかし、一冊全部読むのは何とも面倒だったもので、一部の論文だけを読んだりしました。 結局私が読んだのは、上記の論文に加えて下記の論文でした。まず先に紹介してしまいます。 「『羅生門』の読み方指導」薄井道正 「老婆はなぜ『門の下をのぞきこんだ』のか」足立直子 「国語教科書と芥川龍之介」武藤清吾 「『羅生門』私考」林廣親 後、芥川の全体像を知ろうと文学者アルバムみたいな本もざっと読みました。 結果的に言えば、結構面白かったです。 例えば「羅生門」は大正四年、芥川がまだ東大生だった時に23歳で書かれました。 有名な話である漱石が激賞したのは次の年に書いた「鼻」ですが、「羅生門」は発表した時「反響なく黙殺」されています。 それから100年余り、現在ではほぼすべての高校一年生の国語の教科書に「羅生門」は載っているそうです。そしてその状態はもう十数年続いているといいます。 ということは、高校への進学率がほぼ100%に近い今、日本中で一番読まれた小説がこの「羅生門」であるといって、まず間違いありません。 うーん。えらいもんですねー。発表した当初はみんなに無視された作品が、ですよー。 もしあのシニカルな芥川がこのことを知ったら、どんな感想を持つでしょうねぇ。 ということで、上記の約5編の論文を読んだ感想を以下に報告しようと思いますが、少し前の「山月記」の時の報告同様、これは当たり前ながら学術的な論文でも何でもなく、わたくしが読んだ論文の読みかじり報告であります。 すみませんが、そこんところ、よろしくお願いします。 さて、以前漱石の『三四郎』について調べた時、もはや『三四郎』には学術的な発見なんて残ってないんじゃないかと最初思っていましたが、なんのなんの、興味深い発表が近年に至るもまだまだあることを知りました。 それと同様に、「羅生門」にも、数多くの興味深い学術的な疑問点が残っているということですが、そんな研究史を読んで、まず「羅生門」のテーマについて、三つの捉え方が順番にあったことを知りました。 そのことについて感心したのは、今それらを読めば、後の説ほど説得力があるということ、つまり、先行文献をもとにしながら着々と新しい成果が積み重なっていっているということです。これって、「進化」ですよね。 そんな「羅生門」のテーマ、発表された順に三つまとめてみます。 1.下人の心理の推移を主題にして人間のエゴイズムの様態をあばく。 2.善悪や苦悩の矛盾体である人間の現実をそのままに示し出す。 3.重苦しい現実世界からの自由な自己解放の叫び。 いかがでしょうか。 すみません、この説明、次回に続きます。 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.08.16 17:14:23
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