腑に落ちない
前々から危険箇所であった交差点に信号機をつけるため、町は4角の地主に土地を売ってもらうことになった。4人のうちの一人、Pさんはお金でなく、町有地を買い受ける権利がほしいといった。その町有地は22年前、公共用地に使用する目的で4460万円を支払って、持ち主から、「買主になる権利」を譲り受けただけの「仮登記」してある土地である。(つまり、正式な町の保有地ではない)さらに、その土地は「農地」の上、小面積で、細長い土地なので、公共用地に活用することも出来ない「不良債権」だという。しかも、その土地を町の所有にするためには、もともとの持ち主の協力を得ないと本登記が出来ず、その協力義務は10年たつと消滅時効となる「恐れ」があるらしい。だから、町としては、この際、町の財産の保全のため、Pさんの申し出を受けることとし、鑑定を受けた結果、時価2590万円で「買主になる権利」をPさんに譲渡したとのこと。バブル崩壊を経て土地価格が下落しているので、この金額の差は適正な取引の範囲だという。しかし、その土地は、近々建設予定の大きな県道の予定地だったのである。建設着工に先立って、県が買い上げる約束になっている。そして、さらに、そのPさんは、町長曰く「私の熱烈な支援者」。議会は異例の百条委員会を設置して調査し、町に対して損害補填と土地売買の撤回を求める決議を出した。同時に、町民への謝罪も要求している。つい先日、町の回答が各戸に配布された。上記のような理由による「適正取引」であり、町民にも損失を与えているものではない。法的に不当ではないので、補填も撤回も謝罪もする必要がないという内容だった。その回答チラシを読んでも「適正」なのか「不正」なのか、私のような者には判断できない。でも、胡散臭さだけは残る。と同時に、時の権力者が法解釈や法の抜け道のテクニックを駆使して、「適正」だと言い放ってしまうという「ずるさ」を目の当たりにした印象も残る。ある議員によれば、百条委員会などを設置すれば、よけいな予算がかかり(弁護士や調査費用など)、町長のした事の誤りは指摘できても、町の財産の利益にはならない。それよりも、議会や役場執行部の内々でことをうまく処理することで、金銭的な損失は補える(関係者の間でうまく話をつけてお金を回収するということらしい)し、町長に貸しは作れるし、対外的な恥も晒さずにすむのだと言っておられた。この議員は、町長の不正を承知で、なお「実を取る方が賢明」という意見なのである。議会の中でも、百条委員会の設置に反対する意見もあり、たぶん決議もギリギリで採択されたのだろう。例え、百条委員会を設けることによって多少の予算がかかろうとも、不正をうまくごまかすことによって、実質的な損失が少なくすんだとしても、それでは、「悪いことをしても議会が尻拭いしてくれる」という慣習を生み出すだけではないのだろうか?不正をすることが町民の信頼を失うことであるということを、もっと明らかに出来なかったのだろうか?これから道路用地として、県がPさんに支払う買い上げ金額も、「まだわからないので不正ではない」ということになっている。しかし、今後、Pさんが県からお金を受け取ることは明らかである。Pさんが町長の熱烈な支持者という辺りだって、ひどくきな臭い匂いが残ったままである。最近、議会を傍聴に行っていないのもいけないのだけれど、さいしょ、この問題が議題に挙がった時の町長・助役らのあわてぶりを思い起こすだけでも、胡散臭い…と思ってしまう。ともあれ、私の法的知識がないから理解できないのかもしれないが、あまりにも簡単な説明書きだけを添えて、「議会が出した(たとえぎりぎりの採択であっても)決議に対して、不正はありませんから補填も撤回も謝罪もしません。」というアピールを出す町の姿勢は、腑に落ちない。本当の事を知ることが、いかにむずかしいかを思うと、悔しい気持ちになる。権力のある人はたくさんの「武器」(お金や知識のある人や仕組みなど)を使って私たちのようなド素人の住民を煙に巻くことなどあたりまえに行われていることなのかもしれないと思うと、もっと悔しくなる。議員さんたち、彼らの上を行く「見抜く能力」を発揮してください!と願ってしまうのは「他人任せ」って言うのだっけ?参考:百条委員会執行機関に対する議会の監視機能を実行あるものとするために、地方自治法第100条は、議会は市町村の事務に関して調査を行い、関係人の出頭、証言や記録の提出などを求めることができるとする強力な権限を認めています。 この地方自治法第100条の調査権に基づいて、「公有財産の払い下げに係わる不正疑惑」、「職員採用のあっせんの真相解明」などを目的として設置される委員会が「百条委員会」といわれるものです。