大人しい彼が、わざと高い声で笑う。
大袈裟にはしゃいでいる部屋への帰り道で、
最近少し短くされた髪が、冷たい風に揺れていた。
「だからね。」
彼の顔は笑っているのに、悲しそうに見えてしまう。
「僕がそばにいてあげるから、寂しくないでしょ?」
内心はきっとドキドキしているはずだ、
俺の様子をうかがっている不安そうな瞳に、
俺はなるべく穏やかに、
「そうだな。」
といった。
「お前がそばにいてくれるんなら、
それでいいよ。」
手をのばして彼の頭をそばにひきよせる。
黙ってしまった彼のほうが、俺はよほど心配だった。
「だから・・・・。」
わざと自分を殺して、
俺の好みになるように、
誰かの真似をしたりするなと、言いかけてやめた。
気になって仕方がない。
いなくなってしまった元の恋人よりも、
こんなにも俺のこと思ってくれている、彼のほうが。