カテゴリ:Night
窓辺に腰掛けて外を見ると、遠くの空にはいくつもの夏の雲が連なり山裾を縁取っていた。
そんな眩い光に白く輝く雲を見ていたら、あの上を飛行機で飛んだら 声も出ないくらいきれいな雲海を目にすることができるんだろうな、 なんてことが頭に浮かぶ。 そんな風に雲も光も空の色もまだ夏のものだけど、この前までの夏とはどこか違っていた。 カレンダーが一枚捲られる前には、夏の光を跳ね返すように鳴いていた あんなにやかましかった油蝉やミンミン蝉、ヒグラシの声はいつの間にか消えて、 今はツクツクボウシが一匹鳴いているだけ。 ツクツクボウシは孤独なのかもしれない。 目の前の木立で一匹のツクツクボウシが夏の光に消え入るように鳴き、 それが止むとどこかからその声に応えるような別の鳴き声が起こり、 それも止むと、また目の前の木立でツクツクボウシが鳴く。 そんな儚い音信が繰り返されていた。 僕はそんなツクツクボウシのいる木の辺りに目をやる。 と、枝先の葉がきらりと光ったように見えた。 何があるんだろうと目をこらすと、光はゆっくり枝を離れる。 蜻蛉が一匹、僕の目の前をゆっくり横切っていった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.09.15 00:25:16
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