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Nov 7, 2007
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カテゴリ:読書感想

  枯れちゃった(イーヨー)

こんなにも純粋で、哀しくも切ない想いがあるだろうか?
最後のページ…最後の3行で号泣してしまいました。
ひとつの答えを探して邁進する天才たちは、とても純粋でシンプルな想いしか持たない。
凡人はつい他の事にも目が行ってしまい、色々な雑念がそこに入る。
容疑者Xの天才ゆえのその心に気がつけたのは、唯一認め合える…分かり合える好敵手であり、理解者ともなる天才湯川学だけ。
なので最後、湯川の取った行動がまたとても切なくて号泣。

物語は、最初に思わぬ殺人事件があり、その殺人をどうやって隠蔽するかという所から始まる。
殺人を犯したのは、別れた元亭主に執拗に付きまとわれる母娘。
その騒動に気が付き、いち早く駆けつけて殺人の隠蔽の手伝い(実際には一人で請け負っていた)を申し出たのは、隣に住む、高校の数学教師だった。
やがて殺された男の遺体が発見され、死ぬ直前に母娘の行方を探っていたことも判明し、容疑が母娘に掛かってくる。
しかしその母娘には完全ではないがアリバイがあり、シロとは言い切れないもののクロと断定できるものもない、限りなくグレーゾーンで警察は行き詰まっている。
しかも捜査が進むごとに、この母娘への容疑は薄れてくるのだけど、その完璧とも言える鮮やかさに、何かトリックがあるのでは?と考えずにはいられない。

私も数々読んだり見たりしたミステリー知識(というほどないけれど...)を総動員してトリックを暴こうとして、書中の警察と同じ罠に嵌っていく。
自分なりには~、書中の警察より~、進展的な見方してたと思うんだけど~(ちょっとふてくされ気味に...)
それもかなり的外れな推理だった。。
真実はとてもシンプルで、でも誰もここまで出来ないだろうという...

そこまで献身的に母娘を庇う為に隠蔽を画策した数学教師に対して、この母親は今度は彼に自分の一生を支配されてしまうのではないかと疑心を抱く。
以前から好意を持っていた男性が近寄ってきたことにより、他の男性と仲良くしていたら数学教師が気を悪くして自分たちを裏切るのではないか?という焦りと、でも自分も自由と幸せが欲しいという恣意的な感情の芽生えからそういう考えが芽生えてしまったのだけど、これが凡人の雑念。
「真実を知らないということは、時に罪悪でもあるのだ...」
私もこの物語を読み進みながら、この言葉にたどり着くまでこのことをずっと考えていました。
でも私だったら何の罪もないのにやっぱり身代わりになってもらっただけでも、申し訳なくて自首してしまうだろうと思う。
きっとその罪の重さを背負ったまま普通に生活なんて出来ない...そんな強い心を持っていないから、罪を告白することで楽になる道を選択してしまうだろうっていうこと。
それを証拠に、世知辛い母に比べて、まだ子供で純粋な娘の方が先にその罪の重さに耐えられなくなってしまう。
まぁそれは置いておいて...

でもね、やっぱり容疑者Xはここまでしてしまってはいけなかったんだよ。
ここまでしてしまったがために、逆にこの母娘にさらなる重責を背負わせてしまったことになるのではないだろうか?
結局はね、独りよがりの過ぎた愛情だったんだよ。
一見純粋で献身的な愛のように見えるけど、人と人との間にある想いには一方通行は有り得ない。
物理的に言うと、ひとつの働きかけに対して、働きかけられた対象が反応しないということはないということ。
その反応は必ずしも働きかけられたものと同一のものではないのが厄介なんだけど...
同じ働きかけをしても、どう受け止めるかは受動体しだいだし...
そういう重たい愛情を放り投げられても、受け取る方は大変。。
それこそ一生を束縛してしまうでしょう。
決してそう望んでしたことではないとしても...
本文の中ではそういうことまで書かれていないけど、東野さんはただ容疑者Xの献身を書いただけでなく、その裏にこういうことが言いたかったのではないだろうかって私は思いました。
天才ゆえに、人との関わりが下手であるという設定で、こういう人物像が使われたのかなって思いました。


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Last updated  Nov 8, 2007 02:40:05 AM
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