四捨五入カプリッチオ
皆様、「四捨五入」をご存知でしょうか。そう、4以下は切り捨て、5以上は切り上げる、あれです。小学4年生で学習するこの「四捨五入」ですが、時として、とんでもなく経理担当者やSEを悩ませます。上場企業の発表する決算短信にしても、千円単位や百万円単位での表示になっており、収益-費用=利益という関係が、きれいにあっていないことがあります。つまり、1ずれていたりして、計算が合わないことがあるのですが、これは取りも直さず、各項目を単純に四捨五入しているからです。例えば、売上高1,000千円、売上原価400千円、販管費300千円ですが、売上総利益が299千円となっている場合がありますが、これは売上高1,000,000円、売上原価400,300円、販管費300,300円、売上総利益が299,400円といった場合などに起きます。各項目で四捨五入して、あるがままを出しているので、収益-費用=利益という式が成り立ちません。四捨五入とはそういうものです。しかし一方で、社内での事情は違います。経理:「この帳票、計がずれてて、縦の計算が合わないんですよね~」SE :「各項目を百万円単位で四捨五入してますからね」経理:「何とかなりませんか」SE :「1円単位で表示すれば合いますよ」経理:「それだと見にくいし、 社内規定で百万円単位って決まってるんですよね~」SE :「じゃ、合わない時も出てきますよね」経理:「そこを何とかなりませんか。 合わないと経理として仕事にならないんですよ」SE :「じゃ計は、帳票上の数字で再計算して出力しますか? その代わり、科目別で出した時と、組織別で出した時と、 商品別で出した時とで、計の数値が変わる可能性がありますけど。 あと、○○システムからデータもらっているので、 そこと数値が合わなくなる可能性もありますね。」経理:「いやいや、それはまずい。ケツは合わないと。 何とかなりませんか」SE :「何とかね~」と、こういう流れの会話になり、何とかする羽目になります。やり方はいろいろあるんですが、はっきり言って面倒です。そんなことやったって、売上が増えるわけでもなし、在庫が減るわけでもなし、リードタイムが短くなるわけでもなし、納期回答が早くなるわけでもなし、コスト削減になるわけでもなく、ただの数字合わせだけなので、やりたくない。上記は最後の段階での話ですが、合算してから四捨五入するか、計算前に四捨五入するかなど、どの段階で四捨五入するかで、当然結果も変わってきますし、サマリーキー(SEでない方には伝わらないかも…)が変わっても、結果が変わることがあります。なので、あるシステムAと別のシステムBでは、同じ数値になるはずの値が、微妙にずれていたりします。本来は、設計段階で、他システムとの整合性を考慮して構築するのですが、テストパターンの漏れなどで、ある条件の時だけ1ずれる、なんてことが、本稼動してしばらくしてから発覚することもあります。まあ、大きな誤差にはならないのですが、こういうところに拘る企業は、たいてい他の部分でも細かいところまで拘る傾向があり、従ってコスト管理もしっかりしており、堅実な企業と言えます。一方、「それはしょうがないよね。原因が分かっているんならいいよ、ずれてて。こっちを正とするから」という割り切りのよい企業は、アバウトながら、その分スピード重視で、メリハリの利いた管理・経営をしており、また独自の管理指標などを持っていることも多いです。どちらも一長一短です。