睦月之拾日
トランペットのレッスンを始めた。今まで我流で適当に吹いていたのだが、やはりやるからにはきちんと習おうと、思い立ったのだ。 幾つか教室を見て回った結果、とある楽器店で開かれているジャズトランペットコースに決定。最終的にはアドリブやらを吹けるようになりたいし。 楽器をケースに詰め込んで、いざ出発。 到着。まずは吹き方の矯正から。自分の吹き方は唇への負担が大きいのだそうだ。そこで、負担を減らしてなおかつ高音を出しやすくなる吹き方を教えてもらう。 先生が提示した吹き方のポイントは、9つ。これらを総てクリアしないと、ちゃんとした音は出ない。ひとつひとつ確認し、頭に入れて、楽器を構え、吹く。 しかし音は出ない。先ほどの9つのポイントを頭に入れたつもりでも、いざ吹くとなるとそのうちの2つくらいしか意識が回らない。またポイントを確認し、鏡で自分の状態をチェックしながら、吹く。しかし音は出ない。「音を出す」という、演奏以前の時点でこれだけの神経を使わなければならない。改めてリードのない金管楽器の困難さ、不安定さを身に染みて感じる。 実際に演奏するとなったら、これらのポイントはもう意識せずにできるようにならねばならないのだろう。演奏中にいちいち考えながら音を出すわけにはいかない。発音自体は無意識の領域に任せて、意識の総ては演奏へと集中させる。これが出来て初めて、良い演奏ができるのだろう。「考えるな、感じるんだ! Don't think , feel ! 」とはブルース・リーの言葉ではあるが、これは「考える」段階を通過した上でのことではないだろうか。やはり最初はどんなことでも考えながらでないとできない。そうしたロジカルな部分を無意識にクリアできるようになって初めて、「感性」を語る資格が身に付く。そういう意味の言葉なのだろう。 そんなことを考えつつ、吹く。しかし音は出ない。 一時間のレッスンのはずが、気がつくと既に二時間経過。後でスタッフの人に聞いたのだが、この先生は時間の余裕がある限り教えてくれるのだそうな。 先生の熱心な指導にもかかわらず、この日は結局満足な音は出ずじまい。残念。次回への宿題をもらい、レッスン終了。「地味な作業ばかりで回り道をしているように思うかもしれませんが、将来的にはこの吹き方のほうが良いですから」 と、先生のお言葉を胸に、地道な基礎練習に励むことにしよう。 次回は音くらいは出せないとなー。