私の人生論　(思考が運命になる)

[人生論] カテゴリの記事

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• 科学の発生

  　人類は似ているものと異なるものを識別することで、環境の特徴を素早く認知し状況の変化に対応し生き延びてきました。この認識器官は美を感じる喜びの基本でもあり、悟性とも呼ばれます。これはある物すべてを受け入れ蓄積する能力で、犬はかみついてくること、水にもぐると息ができないことなど、さまざまな事柄を早急に学ばなければならない幼児にとっても、何でも受け入れる能力は生き延びるために必要不可欠でした。しかし経験を重ねていくと「すでに受け入れたもの」と「新たに受け入れたもの」との間に衝突が起こります。そこで「すでに受け入れたもの」と「新たに受け入れたもの」によって生じる矛盾や差異、疑問を説明しようとして、逆に類似性から導き出した推測を説明しようとして生まれたのが科学です。科学を成り立たせる条件は、ある説明が実験により再現できること、とその説明が以前の説明より矛盾が少ないことの二つだけです。そして科学は「愚かさ、欺瞞、狂信」と「真実」を区別する唯一の方法です。したがって、社会学も哲学もみな科学的方法を取り入れようとしています。説明が事実かどうかの確認に膨大な時間がかかった社会学も、インターネットの発達により、かなり素早く説明の確認が可能になり、科学に近づいてきています。

  2011年07月12日

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• 未知への驚異

  　感性（視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚）は何でも受け入れます。感性により受容した対象が脳に蓄積されていく際、そのままではなく、整理、統合されて蓄積されます。その働きを悟性といいます。人類は似ているものと異なるものを識別し整理、統合するこの悟性の働きで、環境の特徴を素早く認知し状況の変化に対応し生き延びてきました。子どもの環境も新鮮で美しく、未知への驚異であふれています。やがて大人になると、その美しいもの、驚異すべきものへの直観力を失い、つまらない人工物に夢中になったり、倦怠と幻想に陥ったりします。私たちが出会う事実の一つ一つが、知識を生み出す種であり、生きがいの種であるとしたら、豊かな感受性は、この種子を育む肥えた土壌です。自然に触れて美しいもの、新しい未知のものに触れ、その感激や讃嘆を十分に蓄積すると、その体験が生きる力の源泉になります。いつまでも未知への驚異を失わない。これが、科学する心や、良心を育み、生の飛翔を生みます。

  2011年07月11日

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• 生の飛翔

  　「一度生まれた人」も「二度生まれた人」も現行の社会をそのまま維持していく道徳の力以外に、新たな形のものを出現させる衝動のような創造的な考えが悟性から生まれる瞬間をもつことがあります。本能と異なり自己の生存を理由としていない悟性にとっては、悟性そのものを発達させる以外に存在理由はありません。それが、生の飛翔という現象を生みます。これは個人が作り出すもので、既存の種や社会を乗り越え社会の利害関係の境界を乗り越える創造的進化といわれる現象です。単なる自己保存でなく、もっと強くなろうと自己主張する生の営みであり、その生き生きした現象は実は過ぎ去った良きものが悟性に記憶として留まって、そんなふうに反響し、谺していることなのです。この生の飛翔という未来の「萌芽」を芽吹かせるかどうかは、私たちの自由意志にかかっています。ベルクソンは、「愛」も生の飛翔と考えています。なぜなら、蟻や蜂の集団にも見られる自己保存本能と異なり家族愛、国家愛、普遍的な人類愛となると、本能を飛び越え、全く新しい概念として、生命に付け加えられなければならないからです。機械的な繰り返しを突き破って芽吹いていく生の飛翔が世界を美しいものにしていきます。

  2011年07月08日

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• 倫理と道徳

  　哲学や宗教から作り出される道徳的な知識、理解も、もともとは悟性から発生し、悟性の発達は社会における幼少時の経験と学習に由来します。社会は個人の集まりに過ぎませんが、社会なくして人間としての生活はできません。道徳はその社会を維持するための必需品です。したがって道徳には他者への共感が必要です。そして倫理とはその道徳に基づく行動です。各国の人は、みな社会を維持するにあたって同じような問題に直面するので、道徳には類似な部分があります。逆に各国の文化によって大きく異なる部分もあります。いずれにしても、どの国でも道徳に反する行為は、通常、本人に罪悪感を、それを目撃した第三者には嫌悪感や怒り、報復など強い感情的反応を引き起こすので、奴隷制時代の南部アメリカでは、奴隷を機械とみなし、ナチスの収容所では意図的に凄惨な用語（例えば「殺害する」）の使用を避けるなど、共感を排除する努力が払われました。共感は、他者を同じ共同体の一員であるとみなすことによって起きます。近年、世界中で道徳の類似性が増加したのは、人類共同体の一員とみなす「輪」が人種や性別を超えてかつて無いほど広がったためです。

  2011年07月07日

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• 哲学と宗教

  　哲学は物事を根本的に深く考える学問です。哲学的思索は自分の人生そのものを舞台として、現代社会とは、自己とは、他者とは何かを自分の頭とことばで深く考えることです。したがって創唱宗教と異なり哲学は誰でも必ず歩かねばならない唯一の道は決まっていません。科学のように先人の到達した地点から出発するものでもありません。出発点はいつも「人間であること」で、そこから各人が一歩一歩と自分の足で歩いてみなければなりません。ここで思想とはさまざまな物事、何らかの対象について思考した結果を言語・言葉としてまとめるまとめたもので哲学も宗教も思想の一部です。私は宗教心とは未知への憧れ、未知への畏敬のあらわあれと考えています。私たちの知識は有限でしかありえないのに、私たちの無知は必然的に果てしがありません。未知への畏怖の一番は死です。死は怖くないということを言う為に宗教はあります。死を遠ざけるには現在を、自分を大切にするしかありません。人は朝起きて夜寝るまで自分を一番大切にしています。顔を洗い、手洗いし、食事をし、・・・等々何から何まで大方の時間を自分のために使っています。他に大事なものは自分の思いですが、その思いを大切にすることも自分を大事にしていることになります。自分以外のものを大事にできるでしょうか。わが子が大事としても別人格であり、大事にしようがありません。平たくいうと一番大切なものは「自己の生命」です。宗教も哲学もすべて自己を基準にしています。

  2011年07月06日

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• 二種類の人間

  　人間は「一度生まれた人」と「二度生まれた人」の二種類があります。前者は世界とは調和のある美しいものだとみており、人生について悔悟とか危機感を抱いたことのない人で、勇気と希望と信頼を信じ、疑惑や恐怖や心配を軽蔑する「素直な心」の持ち主です。後者は人生の本質は不安や懐疑や悪であると考える「疑う心」の持ち主で、世界と人生の無常や無意味の心を悩ませる人々で不条理な人生に思い悩んだ果てに、もう一度精神的に生まれなおすことが必要だと考えているという意味から「二度生まれた人」と呼ばれます。一般に深刻な挫折の経験のない人は「一度生まれた人」が多い。しかし恋愛を経験したり、深刻な事件や病に遭遇すると、人間はいずれ死ななければならないことを理解し、深い不安にとらわれる人もいます。深刻かどうかは各自の心が感じることで、大多数の人は「一度生まれた人」のまま、人生を全うします。中には老い先短くなってから「二度生まれた人」になることもあります。今回の３．１１大災害で諸行無常を感じた日本人も多いと思いますが、そこで「二度生まれた人」になった人は、新たに哲学や宗教に目を向けます。

  2011年07月05日

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• 宗教心

  　自分で十分検討して、判断した場合だけが自由な判断とみなされるといいましたが、十分な検討など本来不可能です。経験則が確立できない現象に対して、世間や自分を納得させるには科学的決定をよりどころにするしかありません。その科学的決定も、当たる確率が非常に高いだけであって必ず当たるわけではありません。予想が外れた場合、人は自分の無知を感じるか、神の采配（未知の力）を感じるかのいずれかです。私は宗教心とは未知への憧れ、未知への畏敬のあらわあれと考えており、自然宗教の神がそれです。キリスト以前の西欧や日本人は、このような神を信じて無知の克服に努力していました。しかし、この神を利用しようと預言者を教祖に祭り上げ教団を結成し加上の法則により肥大して行ったのが、現在のイスラム教、キリスト教をはじめとする新興宗教のたぐいで、これを創唱宗教といいます。「これは神が与え賜うた試練なのだ」そう信じることで、人間は偶然を乗り越えてきました。しかし教祖としての神は、科学的検証に耐えられません。創唱宗教は死にました。自由空間が拡大し、自由の行使に戸惑いを感じている人類にとって、教祖のいる宗教に変わる新たな宗教による倫理道徳を確立し、その宗教心をもって、無知を克服する努力をするのが良いのではないでしょうか。自然宗教の復権です。

  2011年07月04日

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• 不自由とは

  　教育の話は別に考えるとして、ここでは不自由とはなにかを考えます。人間は常に社会の影響を受けているので、自由かどうかの判断も絶対的ではありません。ただ「選択肢があって、そのどれを選ぶかについて何の制約もない状態」は、本人からみて自由な状態だと誤解されています。しかし、当人が選択肢についての知識や、選択肢を選ぶ能力がない場合、本人は自由だと思っていても、本当は欲望に支配された不自由な選択をしているのです。その時、自分で十分検討して、自分の意思で判断した場合だけ自由な判断とみなされるのです。つまり結果を予測し、その責任を引き受けることで自由を行使したとみなされるのです。バーナード・ショーの言うように「自由とは責任のことだ。だから人は自由を恐れる」ということです。現在の私たちは自由があり余っています。自由空間が大きすぎるのです。選択の自由が果てしなく広がったために、経験則が適用できないので結果の予測がつかなくなり何を選択したらよいかが分からなくなって不自由を感じているのです。あまりに開かれた自由な空間に戸惑い、自分というものを維持していく枠組みの喪失に悩んでパソコンの掲示板に自分の場を設けなんとか共通の空間を維持したりしています。

  2011年07月01日

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• 二つの自由

  　では自由空間では、自己の能力と希望を実現するためにどんな自由が行使できるのでしょう。人は生まれてきたときに、すでに８割方が環境として決定づけられています。日本に生まれたこと、この家に育ったこと。８割方を占めるこの環境は、自分の意思で変えることができます。既に与えられた環境は合理的な努力で変えることができます。問題点は見えているので、それをどう克服するかの選択は本人の自由です。これを人は「～からの自由」と呼びます。問題は残りの２割です。これは、本人の内面の問題です。自分はどんな人間になりたいか、それは外部から与えられた環境でなく自分が作り上げる目標であり、どこへ向かうかの自由です。これを人は「～への自由」と呼びます。「～からの自由」は不自由からの脱出過程であり、自分で考え出した「～への自由」の「～」を選択することこそが、何の制約もない自由ではないでしょうか。自由は自分の意思で決定することですが、逆に結果責任は自分が負わなければならないという面をもっています。自由であることはすべてを自分で引き受けることです。自由は、素晴らしい自己を築くという希望を与えてくれ、社会を活性化しますが、逆に自分で自分を律しなければならないという厳しさも持っています。したがって、その厳しさに耐えられず、自由を放棄する人もいます。そういう人が増えると全体主義になります。自由に耐えられる人間を作る教育が大事です。

  2011年06月30日

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• 自由空間

  　自由に欲望を充足させたいとき、人は他人から干渉されずに自分の意志で決めたいと思うものです。物質的な欲望は、ある程度の収入があれば充足できます。逆に、それより下に落ち貧しくなれば必ず精神的自由を失ってしまうような境界線が存在します。精神的な欲望は切りがありませんが、一般的水準よりはるか収入がある大金持ちが下位の人々の自由の機会を脅かしてまで精神的欲望を充足させては世間が許しません、他人の同意が得られないということです。大金持ちは隣人の市民権を否定するほど優越した権力をもってはならない。そのためには大金持ちの自由を制限し資力が、不当に政治権力に転化されたり、政治権力を有する者がそれを私的に行使したりしないように規制する必要があります。この貧困者と大金持ちの両者の間が「自由の栄える空間」であり、そこは十分な空間が保たれていなければなりません。自由を尊重する人は、下限を下げて、多くの人に自己の能力と希望を実現する可能性を与えるよう努力するべきで、その手段は福祉政策と科学文明であり、製品を湯水のように安価に提供するという松下幸之助の水道哲学の実践です。また大金持ちの自由を制限する精神文化の一環としての倫理道徳の確立と、法制化が重要です。人気タレントの私的自由が制限されるように、大金持ちも私的自由を制限されるのです。

  2011年06月29日

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• 自由とは

  　人間の究極的目標が物質的ならびに精神的自由の獲得によるさらなる理性の開発にあると言いましたが、自由とは何でしょう。「自由に生きる」と言えば「気ままに生きる」ことであり、「欲望の赴くまま生きる」ことと同義であると受け取られがちです。しかし「自由」という漢字は、元来は欲望から解き放たれることを意味する仏教用語に由来し、何ものにも拘泥しない囚われない心が「自由」ということになります。ところで、解き放たれるべき「欲望」の最たるものでは金や権力、名誉に対する執着心です。したがって宗教から見れば執着心を弱めて「欲望」を抑制すれば「自由」が手に入るということになるわけです。が、しかし人間の意思は欲望から生まれます。この意思が自由の獲得を目指したとき、逆に「欲望」を抑制しなければならないという矛盾が生まれました。そこから法律や倫理道徳が生まれたのです。強い幸福感を得るには欲望の充足が不可欠ですが、心の平静という幸福感は欲望の抑制によって得られます。この調整を法律や倫理道徳はどのように解決したのでしょう。

  2011年06月28日

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• 科学の目的

  　話を自然科学の発達に戻しますと科学というのは世の仕組みを説明する仮説に過ぎず、加上の説で述べたように、科学上の仮説に対しては常に改良された説が考えだされ、それによって自然を利用する方法も、正確さを増して多様化しています。ただし科学が無制御、無限定に成長し続ければ、それは社会も自然も破壊する癌になります。私は科学の真の目的は人間の自由の深化拡大を助けるものだと考えています。人間は自然の暴威から逃れたいと願っていますが、他面、自然の懐から離れても生活できません。人間の自由な生活にとって、自然は必須の要件です。人間が自然の支配から独立するためには産業活動が必要であり、そして大規模な産業活動は不可避的に大量の資源を消費します。それが、母なる自然の荒廃を招くのです。産業活動の規模が小さい時は、人間はこの矛盾に気づきませんでしたが、今や我々はこの矛盾を痛感せざるを得ません。人間の究極的目標が物質的ならびに精神的自由の獲得による理性の開発にあるとすれば、人間と自然が共生しつつ、やっていけるような世界が理想の世界だと思います。現在は、その目的のために科学はどのように制御されなければならないのかを真剣に反省すべき時が来ているように思われます。

  2011年06月27日

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• 民度

  　現在の日本で繰り広げられている政治的混乱は、突き詰めて言えば、民主主義の成熟度、あるいは、国民の政治に関する関心度、そしてそれが自分達の生活にどのように関係しているかという事の理解度、つまり、「民度」の低さに由来します。民度（みんど）とはある国や社会の構成員(市民)の政治的・社会的・文化的意識の程度、すなわち知的水準、教育水準、文化水準、行動様式などの市民社会の成熟度を指します。しかし、民度は一朝一夕には向上しません。現在の日本も、世界も、まだ成熟には程遠い状況です。高い民度を達成させるには、国民の不断の努力が必要であり、これは非常に長い道のりだと思わざるを得ません。その過程で、多くの苦悩と挫折、そして犠牲が伴います。その犠牲は、当然ながら各国民が負うことになります。自分達の生活が破綻しかけるとワアワア騒ぎ、景気少し良くなると、今度は浮かれて、はしゃぎまくる。この一貫性の無さが現在の各国の民度の低さ示しています。ジェームズ・ロリマーは人類を「文明化された人類」、「野蛮な人類」、「未開の人類」の三種に分けましたが、どの国も、野蛮な人類の域を出ません。

  2011年06月24日

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• 政治と説得力

  　丸山眞男は、J・S・ミルの教養人の定義「あらゆることについて何事かを知っており、何事かについてはあらゆることを知っている」という言葉を政治家に適用して見せました。政治家というのは、恐ろしく複雑な人間社会の出来事について、一応全部知っていてしかも、その人間社会を指揮する方法については徹底的に精通している人だということです。人間社会を指揮する方法が説得力です。現在の民主党に欠けているのがこれです。政治の世界は経験則の世界です。是か非かあやふやな経験則にあっては、相手を納得させる手段としての説得力は大きな意味を持ちます。豊臣秀吉は説得力で天下をとりました。田中角栄もしかりです。小泉純一郎もある意味で説得力を駆使しました。学問で理論を極めるのは大切ですが、それを実践するには説得力で人を動かさないと困難です。政治家は、教養人のごとくあらゆることを知ってしかも、説得力を持つ人が理想ですね。日本にも立派な政治家はたくさんいますが、説得力を磨くよりも、「男は黙ってホニャララビール」の方が楽ですから、どうしても楽な方に走ります。

  2011年06月23日

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• 説得力

  　実証、証拠もなく論理を成立させる場合に、一番のポイントは説得力です。屁理屈でも相手を説得さえ出来れば、その論理はそれなりに成り立つことになります。自然科学にあっても、実験室で実験に成功したからと言って、それだけで人が納得するわけではありません。それが無理のない理論であることをはっきりさせる説得が必要です。自然科学ですら、説得力が重要です。まして実証が無く、是か非かあやふやな経験則にあっては、相手を納得させる手段としての説得力は大きな意味を持ちます。説得するには人間の理性だけではなく、情念に訴えるという要素が当然出てきますから、自然科学との比較で言うならば、客観的ではありえません。主観そのものです。自然科学が興隆する以前には、経験則しか方法が無かったので人間の情に訴えるという面がある事は、致し方ないことです。しかし自然科学が発達し、有無を言わせぬ証拠による思考様式が広まると、経験則は実証性という点において、自然科学に敗北を喫する事になりました。

  2011年06月22日

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• 科学的ということ

  　経験則はあくまでも、疑似科学です。昔の人は経験則で生活していたし、今も近所づきあいは、これで問題ないでしょう。でも、会社の方針や、国家の政策は多少時間がかかっても、経験則だけでなく、科学的な裏付けがほしいですね。カール・ポッパーは科学的か非科学的かの分かれ目の目安を決めました。仮説が実験や観察によって反証される可能性があるものが科学的であり、どのような手段によっても間違っている事を示す方法が無い仮説は科学ではないと言っています。それは科学の理論が実験で証明されても、それは今のところ不都合な結果が出ていないというだけのことで、真理とは断定できない仮説だと言っているのです。つまり科学というのは確定的な法則ではないが当たる確率が非常に高い占いだということです。それに対して経験則は、頭の中で考えだされただけのもので、そこには実験も、実証もありませんから当たるも八卦、当たらぬも八卦の世界で確率的に低くいので、疑似科学であって科学的な仮説ではありません。

  2011年06月21日

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• 経験則

  　科学的知識は正確ですが、獲得には格段の努力と時間が必要です。方程式が出てくると頭が痛くなりますね。しかし身の回りの現象を効率よく記憶しそれを想起して、これからの変化をすばやく予測するには、正確でなくても良いから現実的に感じることができる錯覚の法則があれば良いのです。逆に時間をかけて厳密に実証してから行動しては間に合いません。ある人が「頬に傷跡がある男は強暴だ」とか「ナマズが騒ぐと地震が起きる」とか「傘を持って歩いている人が多いときは、もうすぐ雨が降る」というような世間の法則を覚えておけば、うまくいくと述べていますが、どれも確定的な法則ではなくて、確率的な法則です。まあ、よく当たる、という程度の法則です。実人生では、「だいたいはそうなるだろう」と、錯覚でもよいから、いつも感知できるような覚えやすい単純な法則として捉えることが実用的です。

  2011年06月20日

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• 加上の説と誤り

  　思想は元（もと）は何か一つの初め（知識）がある、そうしてそれから次に出た人がその上の事を考える。これを加上の説といい、ヘーゲルの「論理学」より六十年も前に富永仲基が「出定後語」で述べています。こうして知識はネズミ算式に増大します。われわれが家庭の中や、友人の間や、その他の日常的な生活や日常の諸関係において獲得した知識の場合、誤りはすぐに結果として表れるので早く発見されます。しかし活字的知識の場合、すぐに結果が検証されるわけではないので、誤りや迷信が訂正されにくいという欠点があります。近代になって科学的方法が発達してきました。洗練された観察と検証の下に、世界の認識を絶えず修正する事によって知識の増大をおこなうという科学革命がもたらした知識の増大は、非常に複雑なシステムについて誤りのない真の知識を獲得できました。

  2011年06月17日

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• 脳の進化

  感性とか悟性というとわかりにくいのですが、生物の進化からみると必然的な発展です。そもそも脳の進化は、生物進化(系統発生)をまるでそのまま体現しています。脳幹が爬虫類の脳、大脳辺縁系が哺乳類の脳、大脳基底核（と小脳）を発達させたのが鳥類、大脳新皮質(連合野）を発達させたのが霊長類と言われてきました。しかし鳥類も外からは見えない内側にて新皮質を発達させています。また、魚類にも大脳新皮質が見られます。大脳新皮質の特徴は、多くの情報を蓄積し、その多面的な情報を統合して総合的な新認識(情報)を創出することにあります。そして人類だけが特に大脳新皮質の発達が著しいのは必然です。つまり人類も鳥類も言葉を発明しました。しかし、人類はさらに絵、文字を発明し、知識の蓄積や伝達をたやすくすることで大脳新皮質をさらに著しく発展させました。

  2011年06月16日

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• 悟性の訓練

  　欲望の暴走を食い止めるには、悟性を訓練するしかありません。頭でわかっていても、手が、体が言うことを聞かない。痴漢や万引きの言い訳は大部分がこれです。悟性の訓練が偏っているのです。悟性は、家族制度の中で繰り返し訓練されます。家族は、大きく分けて、四つの機能を果たしていると西部邁は言っています。一つは、言葉を覚えるという機能。二つ目は未来へ向けた決断と説得という機能。第三は因果律や役割分担という合理性を訓練する機能。最後は葛藤を調整して、家族を再統合する機能です。良いことをすればほめられ、悪いことをすれば怒られることで喜怒哀楽の情が育てられ、欲望となり、また躾として欲望の抑制が図られます。人類は、洞窟にすんでいる時代から、そして赤ん坊の時から際限なく悟性を訓練し、この下で分類、蓄積された知識を元に新たな知識の創造と意思の強化を図ります。欲望を達成したいという強固な意志と、それを無理なく実行するという知的行為はこのように悟性から生まれるのです。

  2011年06月15日

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• 欲望の抑制　学習

  　喜怒哀楽の情が発生してくると欲望が際限なく出てきます。しかし、どの欲望に価値があるのか、つまり何が、善であるのか、悪であるのか、それが問題になるのは、生きている人間にとってだけです。窮極の価値とは、人間の生命です。その価値を知る手段は、快楽か苦痛を感じる身体の感覚です。そしてその感覚に従って行動するよう本能が備わっています。この本能の次に発生する欲望を抑制する手段は、学習によって獲得されます。欲望を創出する方法と同様に、欲望を暴発させると生命の危機を招くということは、悟性の学習によって認識されます。この学習は家族における躾の訓練で行われます。欲望の暴発による危機の大規模な例は、歴史上の暴君に観られます。欲望のままに行動し国を破滅させた暴君の例は、枚挙にいとまありません。

  2011年06月14日

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• 感性と悟性

  　欲望こそ知と意を動かす源泉だといいました。でも欲望のままに行動すると人間は変態男と、援交娘の集団になってしまいます。しかし実際はそうならないのはなぜでしょう。それは悟性が歯止めをかけるからです。普通、私たちが外界の事物を認識する場合には、五感すなわち、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚といった感覚器官を通して行います。人間の感性のはたらきです。人はさまざまな対象を認識して知識としていき、知識が経験として脳に蓄積されていきます。感性により受容した対象を脳に蓄積していく際、そのままではなく、整理、統合されて蓄積されます。その働きを悟性といいます。これは家族の影響を受けて喜怒哀楽の情をもとに強化されます。理性は悟性によって確立されたもろもろの概念を元に活動します。この悟性が欲望の暴走を止める働きをします。

  2011年06月13日

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• 欲望と本能

  　欲望というと、何か本能のままに行動することを連想しますが、私は、欲望と本能を別物と考えています。西欧の思想は、欲望を動物的本能としてとらえ、それを制御するのが理性であるとしています。つまり知、情、意の知と意を強調するのが西欧文明です。そこでは無意識の領域にあった欲望や本能、感情は、理性に比べて一段低いものと見なされてきました。しかし、私は、欲望と本能を別物と考えています。そして喜怒哀楽の情こそが欲望の源泉だと考えます。本能は充足すればそれ以上の行動を促しはしません。しかし、喜怒哀楽の情から発した欲望は限度を知りません。欲望こそが、知と意を動かす根本ではないでしょうか。

  2011年06月10日

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• 理想の社会とは

  　人が変えることができる社会なら、人は理想の社会を作れるのではないでしょうか。理想の社会を作る、それこそ世の役に立つ仕事なのでしょうか。人類は理想の社会を作ろうと、努力してきました。その努力の軌跡が歴史です。古代ギリシャの昔から、現代の日本に至るまで、人類は理想の社会を求めて努力してきました。社会はすべて、人々の思いが作りだしたものですから、これまでの歴史は、人々の理想の軌跡ともいえます。したがって理想の社会とはどんな社会か、といわれても3000年の試行錯誤の歴史があるので、すぐには答えられません。まずは、自分の理想を明確にする必要があります。何が価値のある理想なのか、そのために自分は何がしたいのか、充実した生活とは何か。それを極めるためには、自分の欲望に向き合う必要があります。

  2011年06月09日

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• 社会は変えられる

  　社会(制度：システム)はすべて人々の思いが造りだしたものです。決して神が与えたものでも自分の外に物としてある、わけでもありません。社会という現実は、みんなの思っていることが外へ現れたものです。したがって社会を良くしたいと思ったら、「社会が悪い」「社会のせいだ」と社会を責めるのは間違っています。よりよい社会にしようと思ったら、皆の思いを変えなければ社会は良くなりません。そして社会は、みんなが変えることができるものです。小室直樹は「近代デモクラシーがその基礎に置くところの行動様式の特徴は、制度を天然現象のごとき所与とは見ずに、人間によって作られた人為の所産である、と見ることにある」と述べています。つまり人が作ったものだから、人が変えることもできるのです。目的達成のために勤勉である人も必要ですが、どのような規則（ルール）・制度を作ったら、より良い社会になるかを考える人も必要です。日本や西欧、中国の歴史の中頃には、これを別々の人間がおこなっていた時代もありましたが、民主主義の世の中では、各自が勤勉であるとともに、より良い社会を考え実際に作っていく行動をとれるのです。

  2011年06月08日

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• 勤勉のすすめ

  　では、制度の目的を理解し、目的達成に努力することが世のためになることでしょうか。それは、個人の行為としては、それだけで十分立派な評価に値することだといえます。プロテスタンティズムでも、鈴木正三の心学でも、職業を使命と感じて、専心従事するのが修行であり、救済につながると勤勉をすすめています。世の中の人生論はそういった話でいっぱいです。そして西欧や日本の近代資本主義は、この勤勉のすすめで発展してきたことも確かです。ではそれだけで、幸福な人生を全うする良い社会が作れるでしょうか？　残念ながら、自己の最善を尽くして仕事をすれば、自分のためにもなり、社会全体にとっても利益になるという、個人の行動を考えだけでは、良い社会を作ることは不可能です。それならばどうしたらよいでしょう。

  2011年06月07日

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• 社会とは何か

  　さて、今までのことをまとめると、世（世間）のため、人のために役割を果たすのが良い仕事です。そしてその仕事を通じて自己を高めることのできるならその仕事が天職です。では世（世間）のため、人のためという世（世間）、または社会（世、世間と社会は同じ意味です）とは何でしょうか。そして、ためになる仕事とは何でしょう、さらには良い評価を得るために自己を高めるとはどういうことでしょう。まずは、社会とはなにかを考えます。社会とは、複数の人の集まり（群衆）です。それ以上でもそれ以下でもありません。複数の人が集まると、複数の思いが発生します。その思いが目的ごとに枠組みをもつと国家とか、経済とか、学校とか、家とか呼ばれる言葉を与えられた制度（システム）になります。

  2011年06月06日

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• 転職

  そうは言っても、どうしても仕事に愛着をもてない場合がある。仕事には苦労がつきものだ。「石の上にも三年」ということわざがある。頑張れば必ず仕事が好きになるはずだ。そう思って、仕事を続けているサラリーマン、職人、専業主婦、学生も多い。しかし、その仕事に精通し役割を果たせるようになっているにもかかわらず、その仕事に愛着をもてない場合、その仕事を辞めるべきです。その仕事を卒業し、さらに自己を高めてくれる次なる天職を手に入れるべきです。厭（いや）になったからやめるのではなく、そこで学ぶべきことが無くなったとしたら次の仕事に移るのは、私たちの成長にとっては当然の選択だと思います。

  2011年06月03日

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• 仕事の目的

  　ここでようやく、何のために仕事をするのかが見えてきました。人は利己的な目的のため（パンを得るため）だけに働くのではない、他人が評価してくれることを行う、世のため人のために自分の役割を果たすことが良い仕事だ。その上にその仕事に愛着をもって、専門的に深めることができ人格も高められるなら、充実感を味わえるなら、それが天職だ。そう考えれば、昔の職人のように、具体的に仕事の完成まで携わるとか、原料から吟味してそろえるといった、仕事の完結性を求める必要はない。たとえ、部分的な作業に従事するだけであっても、その仕事に熟練し、その中で自己の人格的完成を目指すとき、その人は、天職に就いていると言える。

  2011年06月02日

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• 誰もが評価を求めている

  　孤高の哲学者が、私の説は現代の社会には受け入れられないだろう、と言いつつ自分の考えを本に残すのは、いずれ、自分の考えを認めて評価してくれる人が現れるのを信じているからです。岸信介が、安保改定条約に調印したのも後世の評価を期したためである。勝海舟が、福沢諭吉に出処進退を批判されたとき、「行蔵は我に在り」として相手にしなかったのも、後世の評価を信じていたからです。身近な人、現在の大衆に評価されればもちろんうれしいが、たとえ現在は批判されても未来の人々が自分を評価してくれると思えれば、人は有意義な仕事をするのです。自分の仕事は、いずれは評価されるという信念が、世のためになる仕事に駆り立てるのです。普段は適当に仕事をしている人も、賞与のときには良い評価がほしい。家族からは立派なお父さんだ、しっかりした娘だと評価してほしい。問題の第一は仕事の大小ではなく、その仕事が人のためになるのか、世のためになるのかにある。そして、世のためになる仕事はいずれ評価される。

  2011年06月01日

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• 評価は大事

  　人間は社会的動物です、他人の評価が生きている証しです。他人が認めてくれて初めて存在意義があります。この場合、他人とは、親、兄弟、友人、恋人、妻、上司、世間、政府、世界の誰でもよい。亀井勝一郎は『作品に関する「評判」などを考えてみるとわかるが、新聞や雑誌で、わずか二三の人によって褒められると、万人に褒められたように錯覚して嬉しがるものだ。そして安心する。この逆の場合には忽ちしょげてしまう。世間から見捨てられてしまったと思う。わずか二三人によって為されたことに過ぎないのに、それを世間全般の「評判」の様に受け取ってしまう。事実に三人の評価が「評判」を作ることもあるのだ。宣伝が加わるとたちまち普及し流行現象と化する。自分がいざ流行してみると、流行はむなしいなどと言いながら、内心ひそかに喜んでいるものである。』と書いている。

  2011年05月31日

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• 仕事をしないとどうなるの

  　それでは、仕事をしないとどうなるのでしょう。日本では「各種学校（高等学校、大学、専門学校の他、予備校も含まれる）に通学しておらず、独身であり、ふだん収入になる仕事をしていない、15歳以上35歳未満の個人」をニート（Not in Education, Employment or Training）としていますが、私は収入の有無と仕事とは関係ないと考えています。年齢も関係ない。自分の役割をはたしていれば仕事をしていると考えます。家事手伝いも、ヤクザもフリーターも仕事をしている。仕事をしないとは、学生なのにマージャンをしている、営業マンなのに喫茶店で寝ている。つまり役割を果たしていない状態をいう。そうすると、管理する人（先生、上司）から評価されなくなる。最悪の場合、解雇され安定した収入の道が閉ざされる。したがって、解雇されない程度に、仕事をしている人も多い。

  2011年05月30日

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• 仕事とは？

  　天職の前に仕事とは何かを考えてみよう。仕事とは役割を果たすことです。これは有給、無給とかの、賃金は関係ありません。人は日々、多くの仕事を行っています。そして、その仕事をするのも、しないのも自分の自由なのです。しかし、本当に仕事を放棄しても大丈夫なのでしょうか。なぜ仕事をするのかをもう少し、深く考えてみます。人間は大昔から、いかにして飢えと寒さをしのぐために必要な「モノ」を獲得することができるか、という課題の解決のために知恵を絞ってきました。その手段として、道具を用いるようになった。人間は道具を用いる動物です。そして、その道具を動かすエネルギーとして、家畜を用いました。しかし、家畜よりも人間を労働力にした方が、もっと効率が良い。そして、働く人も「自分が何かをするする能力があると感じる幸福感」を味わえるうえに、飢えと寒さもしのぐ「モノ」が得られる。こうして労働階級が造られていった。これは、国家の発生とも関係してくるが、３０００年ほど前に、農業が発生すると、人口も増加し、都市が作られ、都市を管理する人と、管理される人（労働階級）が発生したともいえる。

  2011年05月27日

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• サラリーマンに天職はない？

  　一般にサラリーマンも工場労働者も企業の部品の一部と思われています。そして部品として効率よく働かねばならない。労働はそれだけで善であり、尊いものだ。そのように言われ、それを信じていかに効率よく仕事をするかを真剣に考えて働いているサラリーマンは多い。仕事は楽しかろうが、楽しくなかろうが、やりがいがあろうが、なかろうが、働かなければならない。それがひいては日本の国力増進につながり、自己の収入の増加につながると信じたい。しかし、本当に天職だと思って働いている人は少ないのではないだろうか。仕事は手段であって、本当の目的は自分の自由の獲得、拡大にある。こう思っているサラリーマンは大勢いるようだ。本当にサラリーマンには天職は無いのだろうか？

  2011年05月26日

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• 大量生産方式

  　安い賃金の労働力を活用し、なおかつ均一な品質の製品を大量に作るために作業を細分化し、各工程の単純化、簡素化により生産設備の切り替え中の段取時間などの各種損失を減らして生産効率を高め、生産にかかるコストを下げることを実現した大量生産方式は、作業者を部分的な業務に従事せざるを得ない状況に陥れ、職業の熟練による愛着意識や全人格の完成という天職意識を崩壊させたといえる。もちろん、これは大企業の従業員の話で、中小企業の従業員はこの限りではない。しかし、天職を見つけることが困難になった要因は、この大量生産方式にある。

  2011年05月25日

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• 天職

  　小林秀雄は「もし天職という言葉を、自分の職業に対していよいよ深まっていく意識的な愛着の極限概念と解するなら、これは正しい立派な言葉であります。今日、天職というような言葉がもはや陳腐に聞こえるのは、様々な事情から、人が自分の一切の喜びや悲しみを託して悔いぬ職業を見つけることが大変困難になったので、多くの人が職業の中に人間の目的を発見することを諦めてしまったからです。これは悲しむべきことであります。」と書きました。なぜ、天職を見つけることが困難になったのでしょう。

  2011年05月24日

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• 生きることが仕事探し？

  　なぜ人は働くのか。人はみな食べるために働く。つまり、生きるためには食べなければならない。食べるためには働かなければならない。これは日本人でも外国人でも、現代人でも原始人でも変わりはありません。しかし、生きるということはどういうことだろう。たんに生命の維持だけではない、人間らしい生き方がある。「人はパンのみにて生きるにあらず！」といいますが、私たちは無意味、無目的に生まれてきたのではない、必ず生まれてきた意味、果たすべき仕事がある。それが天職だ。私たちには独自の天職がある。それを発見する、見つけることが私たちが生きていくうえでは重要なことなのだ。こう考えていました。

  2011年05月23日

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• 私の人生論

  　自分がたまたま生を受けて、そして間もなく死んでしまう意味を知りたいのだ。これほどの不条理の中にも、生きる一条の意味を探り当てたいのだ。充実して生きる道を探しているのだ。それが、何にもまして一番重要なことなのだ。それは、広い意味における自分の「仕事」を探していることにほかならない。

  2011年05月22日

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