2月になってから読んだ本3冊。
朝からどんよりした寒い一日。そう、暖冬のせいで忘れていたけど、今が一年の内で一番寒い時期なのだ。明日は立春で、暦の上では春だけど。降り出した冷たい雨の中、傘差して、チビと一緒に郵便局までの散歩。今日みたいな手を繋げない状況の日は、子連れで外出しちゃダメだ、としみじみ実感する。いくら口を酸っぱくして「勝手に道を渡っちゃダメだ」って言っても、全然聞かないんだもん。「車に轢かれると、血がいっぱい出て痛いし、死んじゃったらもうパパにもママにもばーちゃんにも、もう逢えなくなっちゃうんだよ?」と言い聞かせると、すぐ泣き出すクセにぃ。「いったん痛い目に合わないと、コイツは学習しないんだろうか(ーー;)」な~んて物騒なことが頭を過ったりするけど、これはちょっと、ねえ(苦笑)。チビとの散歩は、ホント大変。はうぅ(ーー;)。* 今月になってからの読み終わり *伊藤たかみ『指輪をはめたい』文藝春秋 bk1/楽天 今月末、僕は30歳になる。その誕生日までにプロポーズしようと指輪を用意したのに、 転んで頭を打った僕は、指輪を渡そうと思った相手が誰だったのか、忘れてしまった。 僕(テル)には、つき合っている彼女が三人いるから、大問題なのだ。。。恋愛小説だと思いながら読んだけど、ラスト間際になって、空気がふいに変化したのに驚いた。この作品、恋愛小説に擬態してはいるものの、まるで現代の童話(寓話?)のようだ。自分に相応しい理想のお姫さまを求めて、遍歴の旅を続けるちょっぴり情けない王子さまの物語。「白雪姫」にしろ「眠りの森の美女」にしろ、どんな物語でも探し求める王子さまにはちゃーんと相応しいお姫さまが用意されていて、“結ばれてめでたしめでたし”で終わるけれど、この現代の王子さまの身の上は、そんなに上手い具合にいかないのだ。一癖も二癖もあるお姫さま達に、翻弄するつもりで翻弄されている王子さまのようすがコミカルで可笑しく、そしてちょっぴり哀しい。結婚相手を探し出す旅は、ホントは自分自身を見つめ、きちんと向かい合うことだった。堅固だった「30歳までに結婚する」の呪縛から解き放たれて、ちょっぴり成長したテル。でも…「マンモスのように氷づけになった自分を溶かし出す」って、あまりにも受動的でわ?現代の王子さまって、お伽噺のお姫さまみたい(立場が逆じゃん^^;)。見つけ出してもらうその日を、ひたすら待ち続けているんですねえ(苦笑)。「結婚=幸せ」とは、必ずしも限らないけれど、テルに本当の幸せが訪れますように。そんな出会いがありますよう、そう願わずにいられない結末だった。何年も前から積んでる作品があるけど、じつはこの作品が初伊藤たかみ作品。「現代の若者が痛々しいほどに純粋かつ不器用な方法でコミュニケーションする姿を描く作家」というイメージが強く、アクの強さを覚悟していたけど、、、そんな心配はご無用。この作品は読み心地もよく、とっても読みやすかった♪本質は変わっていないのでしょうが。「伊藤たかみの他の作品も読んでみたい」そう思わされる作品だった♪山本幸久『笑う招き猫』集英社 bk1/楽天 お嬢さん育ちのアカコと元OLのヒトミ。ともに27歳。 駆け出しの女漫才コンビ「アカコとヒトミ」が、喋って泣いて笑って 唄まで歌ってやりたい放題。 日本一をめざす二人の成長と活躍。第16回すばる新人賞受賞作。 おっもしろかった~♪まるで良くできたドラマを読んでいるみたい。「いくよアカコ」「合点、ヒトミ」阿吽の呼吸で交わされるかけ声を聞くだけで、心弾んでくる。長身のヒトミと豆タンクのアカコの凸凹コンビ。「ホントの芸人」目指し、ひたむきに、でも元気はつらつ奮闘する姿がキラキラ眩しい。それだけじゃなく、物語にふんだんに盛り込まれているヒトミとアカコの友情のエピソードの数々が、またいいのだ。笑わせて、ほろり泣かされ、胸の奥にじんわり温かいものが広がるのを感じる。そう、お笑い青春小説ってだけでなく、女同士の熱い熱い友情を描いた小説でもあるのだ!!彼女達自身もかなり強烈だけど、彼女達を取り巻く周囲の人間も、かなり個性的で魅力的だ。血の繋がりはないけれど、励まし見守るアカコの祖母頼子さん、さりげない優しさを見せる辣腕マネージャー永吉、風采からして怪しい事務所の社長に、元アイドルの妻を持つダメダメな芸人乙、などなど。。。そんな人々に支えられ、これから世に出て行こうとするアカコとヒトミに「頑張れよ~!!」熱いエールを送りたくなること、間違いなし!!「これからがいいところなんじゃない!」その後の活躍を暗示しながらもすっごくいいところで終わってしまったみたいで、不平不満不平不満!!それから後の「アカコとヒトミ」の活躍が、知りたくてたまらなくなる。続編は…あるのかな?文章も滑らかで読ませるし、著者である山本幸久さん、今後もチェックチェック!!嶽本野ばら『ロリヰタ。』新潮社 bk1/楽天 君がいくつでもかまわない。君が君である限り。僕は狂おしく君を求めていた。 僕達の想いをつないでくれるのは携帯メールだけだった…。 スキャンダラスな純愛小説。『新潮』掲載の表題作のほか、「ハネ」を収録。前作『カルプス・アルピス』の鮮やかな青から一転して、モノトーンのシンプルなカバーデザインに、思わずうっとり(*^^*)。著者近影もそうだけど、毎回毎回趣向を凝らし、驚かせてくれるんだから!野ばらちゃんたら!! 物語の最初から「うんもー野ばらちゃんったら!ファッションのロリータとロリータ・コンプレックスのロリータの違いぐらい、ちゃーんと分かってましてよ!」そう突っ込みながら読んでいたら…そうだったのか!!(驚)題名の「ロリヰタ。」からして、こんなに意味が奥深かったとは。しみじみ。 同時に収録されている「ハネ」を読んだ時にも感じたけれど、何年か前にあった缶入り飲料のコマーシャル、「世界を敵に回しても君が好きだよ」の物語、なんですねえ。(だんだんスケールがエスカレートしているようで、読んでいて辛いのだけど。ぐすん)周囲からの圧力に妥協することなく、孤高に「自分自身」を貫く姿勢。自分が自分であり続けるために、どうあっても譲れないモノを決して手放さないこと。たとえその思いが、報われなくても。。。その気高く一途な思いに、読んでいて素直に胸を打たれた私である。まるで自らが拠り所とする信仰のために迫害される受難者みたい。。。カバーを剥がして、下から現われたデザインが、私には十字架に見えた。主人公達が追いやられる辛く悲惨な状況に、読んでいてとても胸が痛むのだけど、“何が今の自分にとって「真実」であり必要なのか、ちゃんと見極め、分かっている”のが唯一の救いなのかもしれない。まさしく“孤高を貫く”、野ばらちゃん的な物語だと思う。純粋な恋愛小説が読みたい人に、オススメです♪しっかし、携帯の絵文字にこれほどまで感動で胸を熱くさせられるとは。野ばらちゃん、恐るべし!!米澤穂信さんのサイトをチェックしたら“サイン本の通販のお知らせ”を見つけちゃった♪もともと購入するつもりだったから、さっそく東京創元社のトピックスをチェック!おぉ!先着30名さま限定ですか!!所定のフォームから申し込んだけど、買えるかなあ。どきどき。