著者は長年、知的障害児の療育に携わり、現在はココロETセンターといる療育期間を主催している石井聖氏だ。
氏が提唱しているココロ・メソッドは行動療法を基本としているが、氏自身が本の中で述べている通り、風当たりは強いらしい。負の因子として時には児童の頬をはたくというようなことも書かれているから、受け入れられない人も多いだろうと思う。
行動療法は半端な知識で行うと子供を追い詰めてしまうということがある。また、自閉症児の場合、負担に思っていることもストレートに現れないことから、有益な方法を慎重に選ばなくてはならないということなので、このように極端とも見える手法は当然のごとく賛否両論だ。
私にはもちろん、このメソッドの良し悪しは判断つかないのだけれど、認知障害の子供がどのような困難を抱えているか、その子達にどうやって、認知することを教えていくかと言うその過程には気づかされることが多い。
いわゆる自閉症児(氏は本の中で自閉症に留まらず認知障害に対応するものとされている)の不思議な行動、こだわり、儀式などがどうして生まれるのかなど記したところは興味深い。
この本は発語もない重症の自閉症がどのように認知できるようになるかという内容なので、りおに直接当てはまることは少なく、認知障害というものを理解したいと思って読んでみたのだけれど、それでも後半の数の概念、文章題への取り組みと言うあたりはヒントになることもある。
実践家と自ら称されるだけあって、本に出ている方法は具体的だ。例えば、言葉のやり取りを進める場合、
何か欲しいものを尋ねるときに、ジュースが欲しい子供にジュースは欲しい?と聞いたのでは応えはオウム返しでも意味が通ってしまう。必ず、ジュースが欲しい?欲しくない?というように予想される答えと反対の言葉で終わるようにすることにより、自分の要求を言葉で伝える訓練となる、など
序章で、世に自閉症について書かれた本は多いが、何を教えるかを書いた本は少なく、さらにどのように教えるかを書いた本は少ない、とあるけれど、これは実感だ。
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