カテゴリ:本のこと
【送料無料】キネマの神様 [ 原田マハ ] 一度開いたら一気読みになるだろうなあと思いながら買ってきた本。 まとまった時間がある時でないと開けられないなと思って我慢していましたがついに開いてしまいました。予想通り、途中で止められず一気読み。 普段、映画は「そこそこ見る程度」ですが、それでもページをめくったとたんにすっかり自分がかなりの映画ファンであるような気分となり、この本の世界にどっぷりはまっていきました。 映画への愛、人のつながり、そしてブログのもつグローバルな可能性を感じるお話です。 冒頭から、なぜかわからないけれど、高校時代にわざわざ友達と六本木まで見に行った「エル・スール」という映画とその映画館を思い出しました。 本の舞台に六本木が出てきたのと、その映画館が高校生の私には地元の映画館とは違ってとてもおしゃれでかっこいいこだわりを持つ映画館として記憶されていたからかもしれません。(その映画館はすでに閉館しています。) 映画館で見た映画はやはり特別で、印象に残るものです。 そこそこしか映画を見ない私が、時々、ロードショーの映画ではなく単館上映の小さな映画館に出かけるのは、この六本木体験の印象が強いからかもしれないし、冒頭の文章、『観るたびに思う。映画は旅なのだと。幕開けとともに一瞬にして観るものを別世界へ連れ出してしまう。名画とはそういうものではないか。そして、エンドロールは旅の終着駅。訪れた先々を、出逢った人々を懐かしむ追想の場所だ。だから長くたっていい。それだけじっくりと、思い出に浸れるのだから。』と書かれているような世界を楽しみに行きたくなるからかもしれません。 エンドロールの楽しみは残念ながら、映画が終わったとたんにざわつきが始まるシネコンの席では味わえないものだから。 ただ、この作品のすごいところは、単に読者に映画へのノスタルジーを思い起こさせる描写があるからではなくて、その描写に、ノスタルジーとは相反した部分を持つ、現代のツールである「ネット」と「ブログ」という媒体を登場させて表現したところにあると思います。 ブログの面白さ、ブログを通じて人が繋がっていることの素晴らしさを味わえました。 ネットの匿名性が問題になるこの頃ですが、このお話の中ではこの匿名性がもたらす、人のつながりの妙、素晴らしさが描かれています。 あまり書くと、これから読む人に差し障るのでこのくらいにしておきます。 女優の片桐はいりさんの解説もすごく魅力的です。(笑) 『楽園のカンヴァス』を読んで以来、マハさんの作品にはまっています。 マハさんの作品には毎回、色と匂いを感じます。 今回は名画座の少しすすけた臙脂の絨毯の色とほのかなカビ臭さ。それから映画雑誌の編集部の書類(紙)の匂い。 次に読む作品からはどんな色と匂いがするかなあ…。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年06月08日 15時05分04秒
コメント(0) | コメントを書く
[本のこと] カテゴリの最新記事
|
|