『家なき娘』エクトル・マロ
こどもの時読んでの強い印象は、家がない主人公が池のほとりの葦で作られた小屋で、工夫して暮らすシーン。木の葉をお皿に池で釣った魚や野草のスープや鳥の卵で料理するところが、まるでままごとのような。鍋やスプーンを缶詰のブリキカンで作ったり、靴を創ったりするところも興味を引いた。原作を読んで=シンデレラストーリー+『小公子』+教養小説+財産をめぐるミステリもどき+過酷な労働者問題+女性の自立+能力技能重視+人種差別問題+理想社会願望+自己確立+大人になる=リアリズムファンタジー(?)と、なんと盛りだくさんの感動もの!しかし、主人公の血筋ともいえる強い意志が、同じ気質の祖父と邂逅するまでの山あり谷ありのていねいな語り口は好感を持つ。ただしこの岩波文庫の翻訳時はなんと私の生まれた年(1941年)のもの、旧仮名遣い、旧漢字が多く読みづらいかもしれない。大人向きには需要がすくないのかもしれない。これでわたしのこどものころ夢中になって忘れられない本を、大人になってちゃんと読んでみる、はほとんど終わり。それは『紅はこべ』『小公女』『小公子』『宝島』『ロビンソン・クルーソー』『二都物語』『ハイジ』『若草物語』などなど。『赤毛のアン』『秘密の花園』はもう愛読書なのでなんどもなんども、だから入れない。