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テーマ:Jazz(1977)
カテゴリ:音楽日記
ちょっといいことがあり、内側も外側も愛でいっぱいになりながら夜の新宿三丁目に降り立つ。
これから、新宿ピットインで菊地成孔3daysの初日。南博さんと共演なのです。 「軽く腹ごしらえをしておこう」と思いつき、ドトールに入ってホットドックにかじりついたところで「ん?」と違和感。 駅に降りてからここまで、男性にしか会ってないよ? ああーそうか。ここ、新宿三丁目だった。すっかり忘れてたー。うわー女のひとり歩きはちょっとこわいな。今日に限って、俺パンクなミニスカートはいてるし。 で、初めてのピットイン。遅いデビューだなー。あと10年早かったら、ジャズとスモークとアルコールに脳みそを溶かされて、突然ジャズヴァイオリニストを志したかもしれないのに!無念! わりと早い番号のチケットを持っていたのに、ホットドックを食べていた5分間のため開場時間に遅刻。 前方に用意された椅子に座れず、3時間立ちっぱなしで聴くことに。 ピットインは小さなライブハウスなのに、200人からのお客さんがぎゅうづめに入っていて、始まる前から意識がもうろうとする。 小さいけど雰囲気があって、ほっとする感じのすてきな場所なのに。(空いてさえいれば) 重ねてきた歴史の分だけ、たくさんの名演と客の喧噪を吸い込んできた、本当にすばらしいジャズバーなのに!(空いてさえいれば!) 集まるひとも、しずかなジャズファン。という感じでひとりで来ている客も多く、穏やかで居心地がいい。(何度でも繰り返しますが、混んでさえいなければ!!) 開演直後には、わたしの後ろで誰かが「ばたん」と音を立てて卒倒し悲鳴が上がり、前の若い女性はハンカチで口を覆ってよろよろと退場していきました。 うーーん。 ピットインよ。レコード会社よ。チケットを多く売るより、聴きに来る人が音楽をゆっくり楽しめるかどうかを追求しようではないか。 人数を増やしても、ひとり当たりの満足度が下がれば、長い目で見ると損だよなあ。 しかし、演奏は実に、実に、足腰の痛みや酸素の薄さを恍惚とまちがいそうになるほど、すばらしかった。 こんな小さな場所で、菊地さんと南さんの音が絡みまくるのを、延々と聴けるなんて! この上ない贅沢であります。 菊地さんもいつになくリラックスした感じで、MCたくさん聞けたし。うれしい。 南さんのピアノは、ヒトが楽器を演奏している。というより、楽器そのものが真夜中、誰もいなくなったステージで歌っているみたいだった。 誰かに鍵盤を叩かれるから、ではなく、ピアノ自身がきもちいいから、楽しいからこのメロディをつまびいているのです。という感じ。 そして、深く、甘く、存分にひびく菊地さんのサックス。 限りなくやさしい、澄んだ水の流れのように透明な南さんの音と溶け合って、これはもう天上の調べです。 「Embraceable You」と、アンコールの「Stars」がよかったなー。 あー「ピノキオ」もすてきだった。「blue in green」も、天井を突き抜けて夜空にのぼっていくような音色だったなあ。 ところでこれを書いているいま、手元に、菊地さんがプロデュースした南さんのアルバム「エレジー」がありますが(「Stars」はここに入ってる曲)、ほんとうーに美しいです。 どこをすくい上げても、南極の海に浮かぶ百年前の氷みたいに純粋で、息が止まりそうになります。 純化された悲しみが、凍り付くようなやさしさに似ていることの戦慄。 精神安定、睡眠導入効果抜群です。「cure jazz」もすごかったですが、孤独という病理への効き目に関して言えば、「エレジー」はその比じゃないです。 cure jazzが「ドリエル」なら、エレジーはハルシオンか、サイレースか?てなもんです。 強烈で迅速な治癒能力があります。 夜毎孤独に悩まされている女性のみなさま、ぜひお試しを。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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