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カテゴリ:音楽日記
菊地成孔さんとペペ・トルメント・アスカラールのコンサート「悲しき熱帯」を聴いて参りました。
場所は九段会館。 お友達で追っかけ仲間(笑)の青豆ちゃんと一緒に、カール・ユーハイムのクリスマスケーキ、バウムリンデを差し入れに買ってゆく。 ユーハイムは、昔仕事でお付き合いをして、とてもお世話になった会社。 今から80年以上前、ドイツから来たユーハイムさん夫婦は、日本で初めてバームクーヘンを焼いたんだよ! …という話を始めると止まらなくなってしまうので、ケーキの写真をHPから借りてきて載せてみました。 とってもかわいいケーキなんだよ。 さて、コンサートです。 菊地さんの音楽に出会って、1年半あまり。 最初は、めまぐるしく変化しながら疾走するその音についていくだけで息も絶えだえだった。 最近になってようやく、周りのピアノやオーケストラの音に耳を澄ませたり、それらの楽器とサックスの音色が溶け合ってゆく過程を楽しめるようになった気がする。 今夜のコンサートは、新作「野生の思考」全曲ほか、前作「南米のエリザベス・テイラー」の中の曲も。 ゲストはウィスパーヴォイスのカヒミ・カリィさん。 カヒミさん、きれいだったなー。 華奢でハードボイルド。 あんなにきれいに黒を着る女性って、なかなかいない。 やや後方の席だったせいかな。 いつもより、サックスの高音がひびきにくいように感じた。 (後で菊地さんの日記を読んだら、やっぱりサックスのご機嫌が悪かったらしい。 最初はちょっとはらはらしたけど、後半はそんなこと、全然感じさせなかった。プロ!) その代わり、オケの全貌と九段会館の雰囲気を、マダム気分でたっぷり味わう。 北村さんのバンドネオン、「南米の…」のころからとろけるような音色だったけど、今回は身動きできなくなるほど美しく、甘く、切なく、彼がソロを弾くたびに南イタリアあたりのしずかな景色が目の前に広がる気がした。 (バンドネオンはタンゴの楽器なので、あくまでわたしの主観的イメージです) ブエノスアイレスで3カ月修業してきたって菊地さんが言ってたけど、すごいなあ。 素人が聴いてもわかるくらい、変わってしまうのね。 それからパーカッションの存在感。 曲調のせいもあるんだけど、前のアルバムより、うんとかっこよくなってる! 女性のパーカスさんが入っていて(記憶が正しければ、前は違う人だったはず)、誰かなー、うまいなーと思っていたら、坪口昌恭さんの奥さまで、三沢泉さんというのだそうです。 坪口さんの奥さんって、打楽器奏者だったのね。 ミシェル・ルグラン「はなればなれに」がほんとうーに美しかった。 バンドネオンとハープが、会話しているみたいなの。 そこにサックスが加わって、パリの街角をスキップしているような楽しさ。 ゴダール映画の主題歌になっている曲なんだって。 映画も観てみたいな。 組曲「ヴィオラ・トリコロール」は、ライブで聴くと、弦楽器の響きがすばらしい! わたし、いまはヴァイオリン弾きだけれども本当は、ヴィオラに憧れていたの。 だってヴィオラの音って、本当にセクシーなんだもの。 弦楽器とサックスが、こんなふうに音を絡ませあうのは、ほかのどんなジャンルのコンサートでも見たことがない。 「プラザ・レアル」、音がきらきら光って、しゃぼん玉みたいに空へのぼっていくのが見えるよう。 この曲を聴くと、自分の部屋にいても満員電車に乗っていてもコンサートホールにいても、異国の薄暗いラウンジでふかふかのソファに埋もれてブランデーグラスを回しているみたいな気分になる(笑) クライマックスは「ルペ・ベレスの葬儀」。 盛り上がっては、絶頂を迎える直前にフェードアウト。 というのを何度も繰り返し、らせんを描くようにだんだんのぼりつめていって、最後に超新星爆発を起こす感じ。 パンドラの箱が開いて、目の前に光の洪水があふれ出してくるような感覚。 サックスの音が体中を満たしてゆく。 オケの一体感が、回を重ねるたび着実に増していくよー! すごいなあこのひとたちは。 息苦しいほどの、圧倒的な恍惚感。浮遊感。 ああ、すばらしいコンサートだったなあ。 前回までのペペは、エキゾチックで甘い感じだったけど、今回はそこに、静謐と、ため息の出るような美しさが加わった気がする。 菊地さんの音楽は、これからどんなふうに魅力を増してゆくんだろう。 同じ時代に生きて、その変化を共に味わえる幸福。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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