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カテゴリ:美術館日記
カウンセリング。
仕事が忙しくて、とても疲れていること。 でも、誰かのために何かをするのは、楽しい。 小さくても、役に立っているという実感が得られれば、嬉しい。 好きな人たちと協力してひとつの仕事を運営するのは、幸せ。 楽しくて嬉しいので、疲れていてもがんばれる。 自分の足で立つことをやめないでいられる。 働くって、ほんとはシンプルなことなのだなあ。 クリニックを出て、国立新美術館のモネ展へ。 疲れていたけど、これだけはぜったいにどうしても、何度か見ておきたい。 通院日を逃すと、平日に見られることなんてたぶんないので。 休日に行っても、絵を見るどころじゃないだろうからなあ。 着いてみたら、思ったよりも空いていて、ほっとする。 がんばれば、足を止めて自分のペースで見られるくらいの余裕はある。 積みわら、ルーアン大聖堂、睡蓮… 大好きな絵の前に立って、色彩に心を委ねる。 水面に踊る光や、日なたの土のにおい、吹き抜ける風の感触まで、カンヴァスから浮かび上がってくる。 絵を見ながら思いついたこと。 モネという人は、絵という媒体を使って、ヒトの五感をあまねく動かす実験をしたのかもしれない。 目の前の風景を忠実に写しとって視覚に訴えるだけじゃなく、視覚を通して人の記憶に働きかけ、さまざまな経験の中から、においや音、手ざわりまで引き出してしまう。 その実験はおそらく成功を収め、今も世界中の人が、モネの絵を通して彼の愛したジヴェルニーの庭を何度でも追体験できる。 家でもモネの絵を眺めたかったので、帰りに図録を買う。 部屋でくつろぎながら、好きな絵を見られて嬉しい。 最近は、朝少し早起きして、カフェオレを作り、モネの絵を眺めてから出かけている。 自分に小さなごほうび。 それにしてもこんなに大きなモネの展覧会、日本ではもちろん、世界でもめずらしいんじゃないだろうか。 メトロポリタン、ボストン、ルーブル。 学生時代、少ないバイト代をはたいて出かけた憧れの美術館の名前が、絵の下にずらっと並んでいる。 図録を見たら、準備期間5年と書いてあった。 5年と言えば、新生児が幼稚園の年長さんになってしまうほどの年月。 ひとつの展覧会のためにそれだけの時間をかけるなんて、わたしの働いている業界とはあまりにも尺度が違っていて、気が遠くなりそう。 正反対だから憧れるだけかもしれない。 けれど今のわたしは、1分1秒をあらそうより、何年もかけて1枚の絵を飾ることに、心をひかれる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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