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カテゴリ:美術館日記
クレーの展覧会をみる。 ドイツの美術館(ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館)がリニューアルのため休館することになって、所蔵作品がたくさん日本に来ているのだ。 ドイツの美術館がどんな傾向で絵画を集めているかなんて、ドイツを訪れないかぎりなかなか知る機会がないから、とても興味ぶかく見る。 シュールレアリズムと、フォービズムからキュビズムの絵が多い。でも、いちばん多いのはクレー。 クレーの絵は、親密さをたたえている。 パステル調のあたたかな色づかい。ぬくもりのある線。 クレーの絵には、音楽がある。 のびのびと、うたい踊るような構図。 それはたぶん、クレーがバイオリン弾きだったことと無関係ではない。 展覧会で初めて知ったのだが、パウル・クレーは前衛芸術家としてナチス・ドイツの迫害を受け、スイスに亡命して絵を描きつづけたのだという。 ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館がクレーのコレクションをまとめて買いとったのも、歴史の反省に立って、ということらしい。 作品の外で画家がたどった運命を知ると、このかわいらしい、楽しげな絵を描くために、どれほどの心のつよさ(たくましさとは少しちがう)が必要だったか、思いを馳せずにはいられない。 展覧会を見る前に、予習のつもりで買った「クレーの絵本」は、クレーの絵に谷川俊太郎が詩をつけた詩画集。 印象的な色と言葉がたくさん散りばめられているが、中でも好きなのは、冒頭に置かれた「愛(Paul Kleeに)」という詩。 リズムがあり、語感が気持ちいい。 声に出して読むと、晴れた朝みたいに心がひろびろ、せいせいとする。 クレーの作品と向き合うときの安らいださわやかな心もちを、この詩はとてもよくあらわしていると思う。 それは、こんな書き出しではじまる。 いつまでも そんなにいつまでも むすばれているのだどこまでも そんなにどこまでもむすばれているのだ 弱いもののために 愛しあいながらもたちきられているもの ひとりで生きているもののために お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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