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テーマ:今日聴いた音楽(75637)
カテゴリ:音楽日記
2週間前に届いてから、日が沈むと毎日聴いている音楽。 菊地成孔・南博「花と水」。 サックスとピアノを中心に構成された、しずかで端整なアルバム。 どこまでも透明で、切ない音色。 だけどぎりぎりのところで悲しいほうへはゆかず、かぎりなくやさしい。 好きなのは「ラッシュ・ライフ」。 心がしゃぼん玉になって、都会の夜空に高く、果てしなくのぼってゆくような解放感。 高揚と、胸が焼けるような甘さ。 それから、バッハのチェンバロ協奏曲。 何気なく聴いているつもりだったのに、1分をすぎたあたりで、つつ…と自分の目から水が出てきておどろく。 菊地さんのサックス、低音部が木管のようにやわらかいので、はっとしてスピーカーを振り返ってしまう。 あたらしいCDを買うと、それが好きなアーティストの作品でも、体の奥に入ってくるまで2、3回は聴き返すことが多い。 でも、どういうわけか、菊地さんや南さんの音はちがう。 最初の1回で、あっという間にいちばん深いところをさらわれる。 水面にあらわれた波紋を見て、わたしは自分の心に泉があったことに気づかされる。 ほかの誰も入りこめない、外界の何にも影響されることのない聖域。 そのほとりに、ひとり満ち足りてたたずんでいるような気持ちになる。 たったひとつの旋律が、明日を生きのびる理由になる夜も、人生にはたしかにある。 この世界に彼らの音楽があって、ほんとうによかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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