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カテゴリ:美術館日記
隣町の美術館にハンス・フィッシャーの原画がやってきたので、くまをさそって観に出かける。 ハンス・フィッシャーはスイス生まれの絵本作家。 (ほかにも、版画家、壁画家、舞台美術家の肩書きをもつ総合芸術家なのですが、この展覧会で紹介されているのは絵本作家としてのハンス・フィッシャーでした) 「こねこのぴっち」や「ブレーメンのおんがくたい」などの作品が知られています。 美術館で絵を鑑賞する…というより、ハンス・フィッシャーの絵本を順番にめくっているような楽しい展覧会。 原画の横には、絵本の文章と、その日本語訳が添えられている。 原画が欠けているページも、ちゃんとコピーが貼ってあるから、物語の流れがとぎれることなく観られる。 すっかり絵本好きの子供に戻って、くすくす笑ったり、小さく歓声を上げたりしながら、たっぷり楽しみました。 なんといっても魅力的なのは、生き生きとした線たち! 軽やかで、さっと引いたように見えるのにとても繊細。 写実的ではないけれど、描かれるすべての動物に命が宿っていて、今にも動きだしそう。 見れば見るほど味わいがあって、一度別の絵を見てからもう一度さっきの絵に戻ると、まるで別の絵みたいに表情が変わっている。 絵と同じように、物語も自由で明るい。 「子供むけ」の絵本にありがちな、お説教がましさはいっさいなし。 好奇心のおもむくまま、ぴょんぴょん飛び回っていたずらする猫たち。 おはなしがどこへ跳ねてゆくか予想がつかないから、ページをめくるたびにわくわくする。 添えられていた説明書きによると、ハンス・フィッシャーの絵本の多くが、自分の子供たちの誕生日や、クリスマスのプレゼントとして描かれたみたい。 創作の基本は、やはり一対一なのだなあ。 家族を喜ばせたいとか、友達をびっくりさせたいとか。 たったひとりの心に届けたくて一生けんめいになる気持ちが、ものを創るときの出発点だと思う。 逆にいえば、どんなに広がっても、いつだってそこへ戻ってくることができるんだ。 ↑わたしがいちばん夢中になった作品。 主人公のねこがすごい迫力! 長ぐつをはくために七転八倒するシーン、がまんできずに声をたてて笑ってしまった。 滑稽なのに勇ましい。ばかばかしくて愛らしい。 ハンス・フィッシャーの絵のおかげで、このお話が大好きになりました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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