カテゴリ:自衛隊・イラク関連
■ということで、まずは「査証とはなんぞや?」と言うことから行きましょうか。 まず、根本的に他国へ入国しようとする船舶や航空機の乗員を除く外国人は、自国政府から旅券(パスポート)の発給を受け、原則としてその旅券に相手国大使館・総領事館等であらかじめ査証(ビザ)を取得した上で相手国の上陸審査を受けねばなりません。 例えば日本の場合は ■と >本邦に上陸しようとする外国人(乗員を除く。以下この節において同じ。)は、有効な旅券で日本国領事官等の査証を受けたものを所持しなければならない。 と定められています。 よって、我が国では空港や港での上陸審査の際に査証を所持していることが上陸申請の前提条件となっています。 で、その査証の役割とは ・本邦に入国しようとする外国人の所持する旅券に付与する「入国のための推薦」 ・当該外国人の所持する旅券が真正であり、表示の範囲で本邦入国・滞在を認定するとの「裏書き」 であると言うことができます。 前述のように、査証そのものは入国許可や滞在許可を保証するものではありませんが、一部の国では査証に渡航国への入国保証の機能を持たせている国もあるようです。 しかし、大半の国では我が国と同様に査証とは別に出入国管理当局の許可を得なければならない制度をとっているそうです。 つまり、査証とは、言ってみれば入学試験の受験票のようなものだと言うことです。 「 もっと詳しく知りたい方は「日本の査証制度について(外務省HP)」をご覧下さい。 さて、査証にはそれぞれの入国目的に応じ様々ありますが、我が国の場合は大まかに分けると「外交、公用、就業、一般、短期滞在、通過、特定査証」の7区分があります。 我が国の在外公館で申請すると目的に応じていずれかの査証が発給されますが、その査証区分によって入国・滞在が認められる期限が異なります。 例えば「外交・公用査証」の場合は期限が「外交・公用活動を行う期間」と具体的な期限はありませんがそれ以外の査証は15日~3年と言う期限があります。 で、この査証の期限が切れたため延長を求めたがカタール政府が認めなかったため、記事のような事態になったわけですね。 ここでやっとようやく長い前書きが終わってようやく本題に突入する訳ですw まず、合法的に特定国に軍隊を派遣する場合は受け入れ国(法律用語では接受国)と派遣国の間で様々な派遣される兵士の法的地位の問題が浮上するわけですね。 この記事の場合で言えば「空自隊員の査証はどうなるんだ」という問題ですが、それも空自隊員にカタールの法律を適用するかどうかという問題な訳ですね。 で、結局は「空自隊員はカタールの法律上どの様な立場なのか?」と言うのが問題になってくるわけです。 例えば日本が派遣国との間で地位協定を結ばないことには、受け入れ国の国内法全てを遵守することになります。 極端な事を言えばイスラム教には禁酒の日があるそうなんですが、仮に「禁酒日に飲酒すると懲役刑」といった法律が存在した場合、そもそも禁酒日と言う感覚のない日本人が運悪く禁酒日に部隊で宴会でも開こうものなら空自隊員が一網打尽に検挙されて刑務所行きという、日本では想像も出来ない事態が発生しないとは言い切れない訳です。 また一番ありがちなのが-この前の日本対バーレーン戦でもちらっと話題になりましたが-イスラム教国では一般公衆にさらされる場所で女性の裸を露出することが厳しく禁止しています。 一番戒律が緩やかなインドネシアであっても日本では考えられないほど厳しいそうですから、ましてイスラム原理主義派が近い所にいるカタールの基地で日常何気なく読んでいる「アサ芸」とか「sabra」なんかをペラペラっと読んでたのを現地警官に見られでもした日には・・・(汗) ・・・私の愛読書「軍事研究」ならまだしも「週刊アスキー」はたまにグラビアページがあるからダメですねw で、こう言う問題を避けるためにも、通常の場合は受け入れ国と派遣国の間で「地位協定」と呼ばれる条約を締結したり、それに相当する合意に達した文章を交換したりします。 簡単に言えば「派遣国兵士は受け入れ国の法律上どの様は立場にいるのか」と言うのをハッキリさせておくわけですね。 例えば査証に関して ■と言う感じに地位協定で予め定めておけば今回のような問題は起きないわけです。 で、今までは地位協定がないので自衛隊員といえども相手国の法規に則って査証を取得・更新するしか滞在する道はありません。 なんとかかんとかやってきて更新手続きが間に合わないときはいったんクウェートに出国して待機したりとかしてたわけですが、3月中旬に半数が査証切れで帰国すると言う事態になってやっとこ >政府は、空自隊員の法的権利などを定めた文書を近くカタールとの間で交わす予定で、今後はこうした事態は避けられると見ている。 と言うことになっています。 何でこんな事態になったかと言えば公式には >カタールは外国軍隊の駐留を公式には認めていない。 と言うことになんですが、実は去年の10月の時点でクウェート、カタールの両国と地位協定締結で基本合意していたそうで、その後クウェートとは地位協定を締結したようなんですが、カタール政府は地位協定の内容を秘密扱いとし対外的に公表しないよう求めたそうです。 日本側は「内容を秘密扱いとした協定は過去に例がない」(外務省筋)として拒否、地位協定の締結交渉は事実上決裂した訳です。 同じアラブ諸国でも湾岸戦争で侵略され、アメリカのお陰で助かった親米国クウェートとカタールではちと事情が異なるようですね。 参考リンク ・<イラク派遣>自衛隊の地位協定合意 クウェートとカタール ・カタールが秘密扱い要求 日本拒否、交渉物別れ ・出入国管理及び難民認定法 ・日本国査証案内(外務省HP) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.04.03 10:04:32
コメント(0) | コメントを書く
[自衛隊・イラク関連] カテゴリの最新記事
|
|