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2007.11.06
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キャッシング

焼き場の少年 07/11/06

産経新聞に掲載された、この写真。

私は最初、戦中か戦後の、ただの"子守り写真"だと思い込んでいた。
しかし、真実を知るや、涙が止まらなくなった。

これは終戦直後、米海軍カメラマンのジョー・オダネル氏によって撮影されたものだ。

場所は、原爆が投下された長崎市の浦上側周辺の焼き場。
素足の少年が背負っている幼児は、彼の弟。

眠っているのではない。
亡くなっているのだ。


その弟を背負い、彼は直立不動で火葬の順番を待っている。


「焼き場に10歳くらいの少年がやってきた。
小さな体はやせ細り、ぼろぼろの服を着てはだしだった。
少年の背中には2歳にもならない幼い男の子がくくりつけられていた。
(略)
少年は焼き場のふちまで進むとそこで立ち止まる。
わきあがる熱風にも動じない。
係員は背中の幼児を下ろし、足元の燃えさかる火の上に乗せた。
(略)
私は彼から目をそらすことができなかった。
少年は気を付けの姿勢で、じっと前を見つづけた。
私はカメラのファインダーを通して涙も出ないほどの悲しみに打ちひしがれた顔を見守った。
私は彼の肩を抱いてやりたかった。
しかし声をかけることもできないまま、ただもう一度シャッターを切った」


ジョー・オダネル写真集 『トランクの中の日本』(小学館発行:1995年)より


胸が詰まった。
記事を読み終えても、しばらくは涙が止まらず、この写真から目が離せなかった。

こんな時代を日本人は生きてきたのだ。
絶望のどん底で、必死で生きてきたのだ。
家族を亡くす悲しみの深さは、今も昔も変わらない。
それでも皆、前を向いて生きていかなければならなかった。
幼い子供ですら己を律し、そんな混乱や惨状の中で踏ん張ってきたのだ。

それなのに、今はどうだ。

子供達が飢えて死ぬこともない。
何処から飛んでくるか分からないミサイルや空襲に怯えることもない。
テレビを観て笑い、食べたいものを食べ、眠ければ寝る。
そんな国にいられることを、今を、何故、幸運に思い感謝しないのか。

それどころか、不満は全て社会のせい、他人のせい。
権利や自由、己の要求ばかりを主張して、他を省みない。
無責任でモラルもなく、ろくに我慢もできない。
他人の痛みや悲しみなど理解しようともしない。

今の日本人の精神は、この少年の足元にも及ばないではないか。


戦後、日本人が失くしてしまったもの。
それは、決して失くしてはならないものだった。

そのことを思い知らされる、あまりにも辛い一枚だった。






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Last updated  2007.11.09 01:47:30
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