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カテゴリ:日本映画(2006)
花魁稼業をエネルギッシュな青春物語として描いた映画、ということになろうか。
評価:☆☆☆☆(微妙なところだが) 吉原の遊郭に連れてこられた8歳の少女・きよ葉は幾度となく脱走を図るが、高級花魁の粧ひに導かれ、吉原一の花魁を目指すことを決意する。やがて成長し、美貌と鼻っ柱の強さで注目を集めるようになった彼女は、お客の青年と初めての恋に落ちるが……。 この『さくらん』が初監督作という蜷川実花監督が描き出した映像は、たしかに非常に美しい。何気ないシーンでも、構図に凝り一幅の絵として仕上がっている様は、さすがに写真家だけのことはある。 ちょっと極彩色すぎるきらいもあるが、“ヴィヴィッド”な写真のオンパレードという点では、一見の価値がある。 もっとも、写真を繋いで果たしてそれが映画になるのか、というと難しいところではあるのだが。 同じく映画音楽は初めてという椎名林檎による楽曲も、画の雰囲気にあっていて悪くない。 で、問題は主人公。 いや、遊郭の中でまっすぐに自分の生き方を貫く女性の姿を土屋アンナが豪快?に演じていて、その一所懸命さは非常に良く伝わってくる。ただ、演技の調子が『下妻物語』とまったく同じなのが、どうもいただけない。本人の演技力がないのかもしれないが、もともとモデルの彼女を起用した監督が彼女の潜在的な演技力を引き出せていない、ということで(も)あろう。 そう言えば、『どろろ』での役柄も同じであったな。 個人的には(ファンの方には申し訳ないが)映画の中の彼女が、どう見ても可愛くも色っぽくもきれいにも見えないこともマイナス。 また、彼女の他、木村住乃、菅野美穂、等々の誰からも色気が感じられないというか、艶めかしさが見られないのは、同じく女優の問題なのか、女性が中心となって創られた映画だからなのか。 もっと“エロっぽく”ないと、当時の遊郭を舞台にという作品の肝が活きてこず、それ無しに“かっこよく”主人公を描くというのは、無用な誤解を助長するのではと余計な心配をしてしまうのであった…。 とは言うものの、上記は男の視点であって、女性が見るとまったく違ったように見えるのかな。YAHOO!の掲示板などでは、女性にはかなり好評のようではあるし。 映画業界がいまだ男性中心社会であることを考えれば、「女性の女性による女性のための」映画は、もっともっと創られて良いだろう。そのためには、この映画がヒットするというのは大事な条件になるので、良くも悪くも今後の日本映画を考える上で多くの人に観て欲しいと思う作品。 ちなみに原作は未読。 『さくらん』 【製作年】2006年、日本 【配給】アスミック・エースエンターテイメント 【監督】蜷川実花 【原作】安野モヨコ 【脚本】タナダユキ 【音楽】椎名林檎 【出演】土屋アンナ、木村住乃、菅野美穂、椎名桔平、成宮寛貴 ほか 公式サイト http://www.sakuran-themovie.com/ 蜷川実花事務所 http://ninamika.com/index.html
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