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分太郎の映画日記

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2007.03.19
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 若き笠智衆が自殺した父親に代わって一家を支える兄を主演した家族もの。
 この年(1939年)に監督として再デビューを飾った吉村公三郎の4作目(通算5作目)で、吉村監督の名を一気に高めた『暖流』の直前の作品。原案と脚本は木下恵介で、彼のシナリオの初映画化作品。ビデオにて鑑賞(2007/3/18)。
 『五人の兄妹』評価:☆☆☆☆

 ストーリー的には、いわゆる松竹大船調そのものではあるが、長男を中心に家族の思いやりと葛藤を描き出した傑作。

 ただ、後半で次男が選挙違反で捕まってしまうのが、やや唐突というか、違和感を感じる※。父親で苦しい体験をしているので同じ過ちを繰り返させるには、もう少し説得力がある次男の描写を(事前に)入れていないと駄目だと思う。
 また時代的なものか、堅さもないわけではない。

※、吉村監督の戦前時代を中心にした自伝『キネマの時代-監督修業物語-』(共同通信社)によれば、その年の4月はじめにに、近く行われる総選挙を当て込んだ選挙粛正のPR映画の製作を松竹が委嘱され、それが吉村監督に回ったのが発端らしい。すぐにはプロットも立たないので、手元にあった(助監督の)木下恵介の書いたホームドラマのシナリオに手を入れて、選挙粛正のスローガンにこじつけてやろうとした、とある。なるほど。それで、次男が選挙違反するシーンや、四男が次男を批難するやや大げさなセリフに納得がいった。

 しかし、描き出されているシーンやエピソードが丹念で丁寧なのが非常に心地よい。
 土手のシーンで縁談話に兄を思ってうなずく妹の表情や、古くて破れた野球のボールの使い方(とくに婚礼の当日に、妹が立ち止まるシーン)、長男と四男の諍いを防空演習に重ねて描く場面(とくに灯火管制下の暗闇で、「サーチライトがきれいだぞ」という笠智衆のセリフは泣かせる)、立ち読みの学生を気遣う古本屋の親父(坂本武)と娘(東山光子)、そして長男が自分の心の支えとなってきたマッチを擦る笠智衆の演技など、味わい深いところが随所にある。

 最後の野辺の送りの行列のシーンは、単純にハッピーエンドで終わらせたくないという木下脚本の表れか。長男の万感の想いと、これからの(さらなる)苦難をも暗示しているようで、なかなか意味深である。

 笠智衆は、朴訥というか、たどたどしい演技がトレードマークのような所があるが、それが家族のために自分は顧みずに懸命に働く長男の役柄とマッチしていて名演であった。

 絶対的な家父長制という背景の下ではあるが、現代にも通じる家族の思いやりと葛藤を描いた傑作として、もっと評価されてもよいと思う。


【あらすじ】(ネタバレ有り)
 選挙違反の罪で逃げていた父親が鉄道で自殺、長男の健一郎(笠智衆)は父が興したマッチ工場をたたみ、婚約者おぬい(忍節子)との結婚を諦めて、母親(葛城文子)と4人の弟妹との一家6人で東京に出てくる。
 12年後、健一郎は鉄鋼会社の職工として勤めていた。次男の要二(日守新一)は、房子(森川まさみ)と結婚して家を出ていたが、一獲千金を夢みて定職にはついていない。三男の良三(伊東光一)は幼い頃からの夢で軍人になり外地にいる。四男の四郎(磯野秋雄)は大学に通っているが、自分だけ学校に通わせてもらっていることに引け目を感じている。末娘のすえ子(大塚君代)は工場に勤めて家計を助けている。
 一日も休まず勤めていた健一郎は、会社からその功労を表彰され、報償金をいただくが、定期代や小遣いとして丸ごと四郎にあげてしまう。四郎は、行きつけの古本屋で今日も立ち読みするも、店番に体よく追い払われ、要二を訪ねると、自分で学費を稼げとイヤミを言われる。友達と一緒に、家族に隠れて血を売る四郎。
 すえ子は、知人が勧めてきた縁談を、内心は同じ工場に勤める男性に気がありながら、兄と母が喜ぶならと承諾する。すえ子が嫁いだ日の夜、要二が選挙違反で捕まってしまった。罰金計で1000円が必要だという。健一郎はある覚悟を決める。
 半年後、健一郎と同じ会社に勤めはじめることになった四郎。その初出勤の朝、健一郎は四郎を一人で会社に行かせ、自分は母と旅支度して父親のお墓参りに出かける。会社で四郎は、工場長から兄が退職したことを聞き、その退職金を要二の罰金にあてるつもりでいることを知る。事情を聞いた工場長は「金より人が大事だ」と健一郎を呼び戻すよう四郎に告げるのであった。



『五人の兄妹』
【製作年】1939年、日本
【製作】松竹(大船撮影所)
【監督】吉村公三郎
【原案・脚本】木下恵介
【撮影】生方敏夫
【音楽】早乙女光
【出演】笠智衆、葛城文子、日守新一、磯野秋雄、大塚君代、坂本武、東山光子、森川まさみ、忍節子、青木富夫 ほか





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最終更新日  2007.04.03 14:57:18
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