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カテゴリ:その他のアジア映画
性同一性障害の問題を扱ったインド映画。トランスジェンダーの叔父を探す旅に出た少女が、様々な人に接する中で徐々に偏見のない目を開いていく、というもの。
昨年11月はじめに開催されたNHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映されたが、チケットを購入していながら、体調不良で(今考えるとノロウイルスだったみたい)観に行けなかったものだ。 東京・渋谷のユーロスペースにて鑑賞(レイトショー)。 『ナヴァラサ』 評価:☆☆☆☆ 【あらすじ】 南インドのチェンナイに住む13才のシュエータは、初潮を迎え盛大な成女式を終えるが、突然“大人”になってしまったことに戸惑いを隠しきれないでいた。 ある日、同居する叔父ガウタムが女装するところを目撃してショックを受ける。詰問するシュエータにガウタムは、自分は生まれつき体は男だが、心は女だったと告げ、近々始まるクーヴァガムの祭りで、女として生きることを誓うつもりだと打ち明ける。 ちょうど両親が親戚の婚礼で不在になり、ガウタムは祭りに参加するため家を出てしまう。シュエータは連れ戻して医者に診せるため、叔父の跡を追う。途中、祭りの前日に行われる“美人”コンテストに出場するというトランスジェンダーのボビー・ダーリンと出会う。 始めはボビーに反発していたシュエータも、身の危険から助けられたことをきっかけに心を開き、ボビーの身の上話に涙する。叔父のような人はけっして珍しくなく、みな周囲の無理解で苦難な人生を送っていることを知るのだった。 そして祭りの当日。苦労の末、ガウタムに再会したシュエータは、父に認めさせるからと叔父を説得して、一緒に家に帰るのだが……。 無邪気な子ども時代から(無理矢理)大人の女性扱いされるようになって困惑している少女を主人公に据えて、その視点から性同一性障害の問題を捉えているのが、この映画の優れたポイントだろう。 登場するトランスジェンダーたちはすべて実際の人々で、映画中で語られるボビーの生い立ちも実際のものという(ボビーはこの映画での受賞が大きく報道されたことで父と和解し、遂に手術を受けたという後日談があるようだ)。 また、後半のメインとなるクーヴァガム村の祭りも、実際に開催されているインド最大のセクシャル・マイノリティの祭典の現場にカメラを持ち込んで撮影されたものという。 といっても、けっして難しい作りではなく、いわゆるマサラムービー特有の歌あり踊りあり、またカメラワーク・色彩設計もとても華やかかつ綺麗で、社会性・メッセージ性とエンターテインメントがうまく融合した作品になっていると思う。 映画の後半は、主人公の少女と一緒に、ただめくるめく(私やたぶん多くの人にとって)未知の世界の映像に流されるだけになってしまうのだが、それはそれで一種ドラマとドキュメンタリーの見事な融合の成果になっていると思う。 タイトルの『ナヴァラサ』は「9つのラサ(感情)」の意味らしく、芸術鑑賞の際に生まれる、恋、滑稽、悲しみ、怒り、勇猛、恐れ、嫌悪、驚き、静寂、の9種類とのこと(パンフの解説より)。と書いても、映画とどう関係するのか、よくわからなかったりするのだが。人の多様性の享受ということだろうか。 正直なところ、自分の中にセクシャル・マイノリティに対する偏見があるのではと問われると、否定することは出来ないが、彼等・彼女等が世界のあらゆる場所で厳しい差別を受けている現状は変えていかねばならないと思う。 その意味で、傍観者だった少女が、そこから一歩踏み出すラストは大変に印象的だった。 人間の“多様性”を肌で感じることのできる映画としてお薦めと思う。 『ナヴァラサ』 NAVARASA(NINE EMOTIONS) 【製作年】2005年、インド 【配給】オフィスサンマルサン、カグス 【監督・製作・原案・脚本・撮影】サントーシュ・シヴァン 【音楽】アスラム・ムスタファ 【出演】シュエータ(シュエータ)、ボビー・ダーリン(ボビー・ダーリン)、クシューブ(ガウタム/ガウタミ)、アーシャ・バーラティ(会長)、エッジ(シュエータの父)、アペクシャー・バート(シュエータの母)、プリンス・プラナヴ(隣の少年) ほか 公式サイト http://www.sanmarusan.com/navarasa/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.04.09 09:03:16
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