久し振りに母校に行った。○十年前毎日上った坂がこんなに急勾配だとは思いもよらなかった。都心のど真ん中だが木々の紅葉がきれいだ。懐かしい建物の中に入ると、胸がいっぱいになる。ここには当時寄宿舎があり、しばらく住んでいたのだ。彼女も一緒に。
先月の初めにクラスメートが突然なくなった。今日はその友人の追悼の御ミサが開かれた。初めは信じられなかったが、日を追うごとに、細かな思い出が蘇ってくる。遠い意識の彼方から彼女が思い出を連れてきてくれるのだ。
彼女にはしてもらったことばかりだ。同じ部で運動もやったし、バンドも組んで歌も歌った。何回も泊まらせてもらったし、旅行にも行った。大学でも同じように付き合ってくれた。
私は何もお返しをしていない。当時ただそばにいただけだ。とても大事にしてもらったのに。外国に私は行ってしまい、会わなくなってしまった。他の友人には、まれではあったけれど会うチャンスがあったのに彼女にはとうとう会えなかった。
ミサの間涙が止まらなかった。会おうと思えば会えたのに。会っていないから、よけいに信じられないのだ。思い出が毎日鮮明になっていくだけで。
心に残る人にはできるだけ会って、ありがとうと言わねばならない。