『通訳する機械』?
今朝のニュースに、北朝鮮をめぐる6ヶ国協議について、アメリカのライス国務長官のコメントが出ていました。その内容が字幕にでましたが、そこに『取らぬ狸の皮算用』という日本のことわざがありました。まさか、アメリカ人の彼女が、そのことわざを知っていたとは思えませんから、テレビ局の意訳でしょう。人間の長い歴史から生み出された教訓は、表現こそ違いますが、共通した内容があります。先ほどの『取らぬ狸の皮算用』に相当する表現は、ほかの言語でもあるでしょう。日本人で英語の通訳になりたい人は、英語はもちろんですが、母語である日本語の能力も要求されます。慣用的な表現、ことわざなどは、直訳しても、相手に通じません。日本語でいかなる意味であるかを理解していないと、相手に通じる英語になりません。通訳には日本語の能力も必要であるという教訓のもとになったエピソードを紹介します。ある日本のエライ人がアメリカへ行き、アメリカのエライ人と会談をしました。日本のエライ人の発言の中に、'海千山千'という言葉が出てきました。日本の通訳氏は、これを'Sea Thousand , Mountain Thousand(山が千、海が千)'と訳しました。皆様は、これがアメリカ側に通じたと思いますか?今度は、通訳泣かせの話です。こんども、日本のエライ人がアメリカへ行き、アメリカのエライ人と会談をしました。このエライ人は、挨拶で「日本人は米を常食としています。日本ではアメリカを米国と呼んでいます。いやあ、お互い、米を通じての関係が深いですね」といいました。あなたが通訳なら、どう訳しますか。通訳の仕事で難しいのは、通訳すべき内容をそのまま訳して伝えるべきかどうかです。相手の蔑称、相手を罵った言葉は、そのまま伝えるか、それとも別の言葉に置き換えるか、悩むでしょう。ただの一般市民ならともかく、現役の閣僚、政治家であれば、日本の利益を考えた通訳をすべきでしょう。あの大臣の発言の場は、幸いにも日本国内でしたが、もし、アメリカであった場合、あなたが通訳ならば、'Machine'と訳しますか?もし、そうであれば、あなたは『通訳する機械』と呼ばれるでしょう。