ファーストキス~2.キスの予感~(10)
「花澄さ……本当に竜也でいいの?」「ねぇ……」「こいつねー意外と小心者なのよ……」「うん……」 確かに。「最後の一押しってとこでなかなか決心がつかないってわけなんだな……」 真剣に郁巳が話す。「あーうるせーよ。お前、余計なこと言うなー」 竜也が照れてる。「はいはい。でもオレはお似合いだと思うよ。じゃぁ、オレ、こっちだから……」 そう言うと郁巳は帰って行ったんだ。 わたしと竜也は駅の近くの公園に向かった。 学校帰りのデートコース。 ちょっと寒いけど、お金もかからないし、静かでいい。 いつも公園のベンチに座っていろいろ話してるんだ。「もう2月か……もうすぐ春休みだな……」「竜也、気が早いー。まだ、テストが残ってるよ?」 わたしの大っ嫌いなテスト。 2年生最後のテストなんだ。「オレ、そういうイヤなことは考えないの。その後の楽しいことを考える」「なる程ね……」 ステキな頭だわ。 わたしはムリ。 やっぱりテストのことが気になっちゃうもん。 今回、結構難しいみたいだし……。 進級できなかったらどうしよう……とか思っちゃうもん。「花澄、どっか行きたいとことかある?」「行きたいとこ?」 んー。 急に言われると考えちゃう。 いっぱいいっぱいあるんだけどね……。「春休み、どっか……」「あっ! 温泉とか……」 わたし、竜也の言葉を遮った。 ゆっくりとお風呂に入りたい。 大きいお風呂に入るのって、気持ちよくない? 家のお風呂とはまた違っていいんだよね。 それに、温泉って、解放感があるんだよね。 友達とかと行くと、普段は話せないことでも、温泉だと話せるっていうの? そういうとこがある。 気分転換にもなるし……。 露天風呂とかもいいよね?「……花澄、あのさぁ……」 竜也が呆れてる。「あっ、おばさんっぽかった?」 そうだよねー。 高校生の発言じゃないよね。 しかも彼氏と遊びにいくのに温泉って……。 それはないよね……。 わたし、何考えてんだか……。「いや、そうじゃなくて……」「ん?」「や、だから……温泉となると旅行になるから……」 竜也が顔を赤くしてうつむいた。 >>>つづく