屋久島でカモシカ山行
もう先々週のことですが、さる雑誌のグラビアの仕事で、山岳カメラマンの西田省三さんと2人で屋久島へ行ってきました。今年はヤクシマシャクナゲが当たり年とのことで、全山を所狭しと埋め尽くす群落は、それは見事でした。それにも増して、白地の花弁に薄く入る紅色のすじがなんとも品がよく、幾度も立ち止まって見惚れてしまいました。朝陽の差す時間に撮影ポイントにいる必要があり、3日連続で、2時起き3時出発というスケジュールでした。真っ暗な中でも、ふだん通りに地図読みをしてやろうと張り切って歩いたのですが、やっぱり早読みの傾向が出ますね。たとえば、淀川小屋から花ノ江河への登路では、そろそろ最後の登りが始まるころだろうと読んでいると、右に沢の音が聞えてきて、修正を余儀なくされる。1cm以上の早読みです。自分の傾向を計算に入れて、正確に現在地を特定できるようになったのは安房岳付近からでした。私にとって屋久島は2回目です。前に訪れたのは約10年前なのですが、そのときも夜間歩行をしていて、実はヒヤリとする経験をしました。といっても、ほんとうのカモシカ登山ではなく、小屋から水を取りにいくときの話です。石塚小屋の水場は、小屋から登山道を稜線方向へ200mほど歩いたところにあるのですが、夜、そこへ向かう途中に、道から外れてしまったのです。はっと気づいたときは、もうヤブの中でした。道からどのくらい外れたかは分りません。左にズレたのは分ったので、右へ戻ったのですが、どうしても登山道を見つけられない。10分以上も、うろうろしたと思います。焦燥が募る中で、これ以上動かないほうがいい、と判断しました。私の事情を察知した仲間のコールで道へリカバリーできたのは、それから15分くらい経ってからです。いくら夜とはいえ、この自分が登山道を失うとはと、しばらくはショックでした。今回、その石塚小屋に再び泊まり、そこからカモシカ山行もしました。明るい時間にも歩きました。しかし、前回、自分がどの地点から道を外れたのか、わかりませんでした。そのくらい、踏み跡が明瞭なのです。人に話すのも恥ずかしいようなエピソードなのですが、あの1件は、今も私に、冷や汗が噴き出る感覚を思い起こさせるると同時に、過信するな、山での危険はどんなときにも身近にある、という教訓を、繰り返し提示するのです。