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カテゴリ:感想文
「グレイ・ラビットのお話」アリソン・アトリー
「むぎばたけ」「こぎつねルーファスのぼうけん」で紹介したアリソン(アリスン)・アトリーの本です。最近アトリーが気になってます。 こちらのほうが有名かと思いますが、ピーターラビットほどの知名度はないです。 なぜかというと、やはりアトリーの作品は、のどかな田園風景の中でのんびり生きる善良な動物たちの話ではないんです。 はたから見れば一見何事もないように見えても、危険はすぐそばにあって、すぐ隣にいる者が知られずに悲しみをかかえていたりする。とてもこわれやすいあやうい世界の中にわたしたちも生きているのだなと思います。そういうあやうさがこの物語には見え隠れしています。 主人公はグレイ・ラビット。まじめで思いやりのあるウサギです。 でも、同居人のヘア(ウサギ)とスキレル(リス)は身勝手で、グレイ・ラビットをこき使っています。 ある日グレイ・ラビットがニンジンを取りに畑に行くと、人間に見つかって追いまわされ、けがをして帰ります。ラビットは畑というところをみんなが野菜を採れる自由な場所だと思っていたのです。これからは自分でニンジンを植えようと、植え方を物知りふくろうに聞きにいきますが、代償として自分の尻尾を切られます。悲しむラビットをヘアたちは笑うのですが、ある日そのヘアたちがイタチに襲われ、グライ・ラビットは必死で助けようとします・・・。 マーガレット・テンペストのきれいな絵とともにつづられていて、絵本ではありますが、活字もけっこう多いです。小学校中学年の感想文に分類しましたが、読み応えがあります。 石井桃子が訳していますが、「むぎばたけ」など他の作品同様、美しい美しい描写に感動します。 擬人化されていますが、「みんな仲よく」ではなく、ウサギはウサギ、イタチはイタチ、フクロウはフクロウ、そして人は人。みなそれぞれの生を生きています。 何かを望めば代償を払うことになりますし、食べられたり、食べたり、自然界は過酷で、バランスを求められます。 アトリーはそういう事実に目をつぶらず、さまざまな作品を通じて、ありのままを受け入れて生きていくことをテーマにしているように思います。 以前からアトリーの作品は、イギリスっぽいモチーフで好きだったんですが、最近おくらばせながら「あれ・・・?」と何か違和感を感じるようになって、何冊か読み直すうちに、だんだん見方が変わってきました。 もし読まれる機会があれば、できることならハードカバーで一度読まれることをおすすめします。とにかくフルカラーの絵が美しいです。・・・でもっけっこう高いので、図書館で・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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